BLEACH

□夏のエレジー
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蝉の鳴き声。生温い風。燦々と降り注ぐ太陽の光。まさに夏というある日の午後、浮竹と京楽は十三番隊舎へ向かって歩いていた。何故京楽かというと彼は具合を悪くした浮竹を心配してついてきたのだった。


「…浮竹、エレジーって知ってるかい?」


突然、京楽が口を開く。この男はただでさえ何を考えているか分からないのにいきなり何を言い出すんだ、暑いしふらふらするから止めてくれと浮竹は思う。


こういう会話は嫌いじゃないけれど。


「ねぇ」


これはしつこいぞ。エレジー、そう、エレジーとは哀歌のことだよと答えようとするがまた京楽が口を開いた。


「僕は僕自身にエレジーを捧げたいんだよ」


意味が分からない。


「一体何が言いたいんだ?」


誰でも聞き返すだろう。自分自身に哀歌を捧げる。意味が分からないと浮竹は首を傾げた。


「エレジーっていうのは哀歌…つまり哀しい恋の歌、だろう?」


浮竹は頷く。


「でもね、哀しい恋の歌にも色々な種類があると思うんだ」


これは長くなりそうだと思いつつ浮竹はまた頷いた。


「僕の場合はね、伝えたいけれど伝えることのできない、そんな恋なんだよ」


ははあ、こいつは面倒だ。適当に相づちを打つ浮竹。


「だから、エレジーを捧げてしまえば哀しくなくなるんだ…分かるかい?」


「…全く分からないよ、京楽」


もうそろそろうんざりしてきたんだというオーラを出すが通じるはずもなく。京楽はにっこり微笑みまた話し始める。


「つまり…僕が君に告白するということ」


ああ、遂におかしくなったか。お前が俺に告白する、なんて有り得ないだろう。いい加減にしてくれ、と浮竹は呆れる。


でも、それはそれで嬉しいような気がすると思ってしまう訳の分からない自分がいるのは確かで。


「冗談なんかじゃないさ」


顔を上げた瞬間、ふわりと抱き締められた。


「好きだよ、浮竹」


どくんと心臓がはねた瞬間、耳元で甘く囁かれた。


「ねぇ、浮竹は僕のこと嫌いかい?…好きだと嬉しいんだけど」


嫌いな訳ないだろう、俺もお前のこと好きだったんだなんて言えたらかっこいいのに。
何も言えず、浮竹はただ京楽の背中に腕を回した。


「好き」


たった一言囁けば、エレジーが二曲できた。それだけで。


(京楽は誘導尋問が巧いな)

(だって君ったら分かりやすいんだもん)
        ーendー


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