銀魂
□設定上の憂鬱
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授業も終わり、校内が閑散とする放課後。
「だーっ!もう我慢できねえ!」
Z組の教室で土方十四郎は珍しく大声で叫んだ。
「どうした、トシ」
それに返事をしたのは、同じくZ組の近藤勲。
2人は放課後だというのに教室の掃除をしていた。原因は担任である銀時の授業をサボったためである。そしてまた土方が悪態をつき始めた。
「しかも掃除かよ!あーサボらなきゃ良かったぜ!」
黒板をきれいに消しながらぶつぶつ言う彼に、本棚を整理していた近藤は手を止めて言った。心なしか顔がニヤケているようにみえる。しかし声には疑問を含ませて聞く近藤。
「サボらなきゃ良かった?」
その言葉に土方はびくっと体を強ばらせる。彼はそれを誤魔化すように顔を見ないで返事をした。
「だって近藤さんが、」
しかし、土方がそこまで言ったとき体に感じる大きな温もり。
「ななななんだよっ!」
慌てふためいてバタバタと暴れる土方だが近藤はいとも簡単にその腕を掴んだ。近藤は後ろから土方を抱きしめていたのだ。
「トシ、ほんとうに授業サボらなきゃ良かったって思ってる?」
耳元で囁く近藤。そして彼は黙り込む土方をさらに強く抱きしめて意地悪く言った。
「気持ちよかった、でしょ?」
その瞬間土方の顔は真っ赤になり俯いてしまう。何を隠そう彼らは授業をサボった上に、屋上で行為に及んでいたのだ。それを思い出したらしく土方は小さくつぶやいた。
「…あんたを感じられたから気持ちいいに決まってんだろ」
土方はこう言った後さらに真っ赤になる。近藤はというと、こちらもまた茹で蛸といい勝負の赤である。しかし土方は見逃さなかった。彼を束縛していた腕の力が抜けたことを。
「わっ!」
近藤は抱きしめていた土方がいきなりいなくなり目をぱちくりとさせる。土方はしてやったり、という顔をするが近藤はまたニヤケている。それに危険を感じ後退りする土方だが後ろは黒板のみ。
「じゃあさ、なんでさっき怒鳴ったの?」
その質問に土方はああ、と思い出したように言った。
「煙草、吸いたくなって」
でも設定上しょーがねーよな、と諦めたように付け足す彼に近藤は言う。その表情は少年のように輝いていた。
「だったら…これで我慢しといてよ、ね?」
土方はこれってなんだ、チョークだったら容赦しねえぞと突っ込もうとするが、もはや彼の唇は塞がれていて。
「んっ!」
驚いて目を上げると直ぐ近くに近藤の瞳。土方はそれが笑ったような気がして思わず目をつぶる。
次第に深くなる口付け。夕日が射し込む教室には水音だけが響いていた。
「ふあ…」
ようやく解放されたと思ったのに今度は首筋に吹いつかれてしまう。
「んあっ…やめ、ろ」
何とか抵抗を試みる土方は近藤の胸板を押すが逆に強く抱きしめられ腕を封じられてしまう。
「近藤、さん」
土方が名前を呼ぶと近藤は顔を上げ、ん?と返事をする。
「首じゃなくて、口にしろよ…」
てか言わせんなと呟く彼をみて近藤は微笑むと深く深く口付けをした。
夕日だけが二人を見守り、彼らを燈赤色に染め上げていた。
(教室で、なんて…)
(屋上がよかった?)
-end-
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