キミのとなりで

□キミのとなりで11
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「でもそれじゃあ、神田さんが…。私は部屋の隅っこの一畳分ぐらい貸してもらえればいいので…」

「煩ェな、俺がいいって言ってんだ。黙って使え。」

そこへ今までどこに行ってたのかアルマが口出しをしてきた。

「そうだよ。ユウが使えって言ってるんだから使いなよ〜」

突然の出現に名無しさんの体が一瞬硬直したのが繋いだ手から伝わってきて分かった。

「アルマ…お前…。今までどこにいたのか知らんが、空気は読めてたんだな」(←お前に言われたくない)

名無しさんと抱き合ってる時、アルマは気を使ったのか俺たちの周りにいなかった。

「どうせユウはさ、大概夜は仕事でいないんだし、君も昼間仕事でしょ?お互いが家にいる時間はあんまないんだし、気にすることないよ」

「アルマくん…」

「ユウがいない時間に部屋を借りてると思えばいいじゃん」

そう言ってプカプカ宙に浮くアルマが俺にアイコンタクトを送る。

「…ということだ。だから気にせず使え」

律儀と言うか頑固な名無しさんを納得させてくれたアルマに感謝だな。

しばらくこき使わねェでおくか。

名無しさんはしばらく考えこんでいるようでおとなしかったが車に乗ると、しばらく世話になることを承諾した。

「それじゃあ、住む所が見つかるまでお世話になります」

と、後部座席から俺に向かって頭を下げた。

「でも、タダでお世話になるわけには…。1日いくらとか宿代を決めませんか?」

「ハア‥」

車のエアコンを調節しながら俺は盛大にため息をついた。

「名無しさん!宿代なんていらないよ!ユウはただ名無しさんを手元に…「ごらっ!アルマ!」

「あ!ごめん」

余計なことを言おうとしたアルマをバックミラー越しに睨むとアルマは口を手で押さえ、窓の外の景色を見ようとこちらに背を向けた。

しまった!

名無しさんの前で怒鳴り声を上げてしまった!

マイナスのイメージを与えたくねェのにぃ〜!

名無しさんが今、どんな表情をしているのか恐ろしくて見れねェ…。

だから俺は車を発進させた。

それから名無しさんが何も話さなくなったので、嫌われてしまったのかと凹む自分がいた。

車内が無言のまま10分が過ぎた頃、名無しさんが何もなかったかのように話しかけてきた。

「それじゃあ、宿代の代わりにお家の事をやらせてください!」

名無しさんが怒ってる風ではない事に、頭の中で小さな自分が小躍りした。

こんなの自分じゃねェ!…と頬が熱くなるが名無しさんのことになると自分でも知らない訳の解らん症状が出るらしい。

「家のこと?」

出来るだけいつもの自分を装う。

「はい‥。ごはんとか掃除とか…ずっと考えてたんですけど私にできることはそれぐらいしか無くて…」

自嘲気味に笑う名無しさんには悪いが、内心、名無しさんの飯が毎日食えるのかと思うと、また頭の中で小さな自分が万歳三唱をしていた。

名無しさんは俺を怖がっていたわけではなく、宿代の代わりを考えていたらしい。

だから喋らなかったのか。



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