キミのとなりで

□キミのとなりで11
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「いや、これは、別に泣かしたわけではなくて…」

ああ…自業自得だ。

相変わらず人からジロジロ見られるし、別に気にしねェけど…

名無しさんを泣かしたって事が恥ずかしい。

アルマは煩ェし。

「ごめん…」

俺は静かにそう謝った。

「ちっ…ちがうの…神田さんのせいじゃ…」

そう言って名無しさんが顔を離したのか、背中に潮風が入ってきたので俺は回れ右をして名無しさんと向き合った。

宝石のような涙を名無しさんは手のひらで拭い、続けて言った。

「い…ろんな…ことが…ゴチャゴチャして…一気にブワッ…て」

「名無しさん…?」

全身全霊で彼女のことを守りたいと思った。

俺は彼女の両手首を掴み、ゆっくり顔から剥がしていく。

「だから、神田さんのせいで泣いてるわけじゃ…って…見ないで…」

泣き顔を見られたくないらしく顔を背ける名無しさんを俺はそのまま自分に引き寄せ、腕の中にすっぽり収めた。

俺はお前を傷つけた奴が憎い!

だがそれを口にすると名無しさんはきっとそいつを庇うだろう。

「泣けよ。お前にならいくらでも胸を貸してやるから、気が済むまで泣け。」

「神田さん…っ…ありがとう‥」

いつの間にか赤い太陽も沈み、人工の明かりが海を照らしていた。



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気付けば家族連れの多い時間帯からカップルだらけになっている。

俺たちも端から見ればカップルに見えるのだろうか?

その事に少しだけ優越感を感じたが残念なことに落ち着いてきた名無しさんが俺の胸を押した。

「ごめんなさい、お洋服、汚しちゃった…」

「ああ?別に構わねえよ。っんなもん。」

「でも…」

「気にするな。もう暗いし暑いし直ぐに乾く」

できるだけ優しく言って名無しさんの頭に手を置く。

「帰るか」

俺がそう言うと名無しさんが驚いたように瞼を大きく開けた。

「ん?おかしな事言ったか?」

そう尋ねるとブンブンと顔を横に振る。

「私…神田さんに迷惑ばっかりかけて…」

他人行儀な事を言われると距離を置かれているようで胸が苦しくなる。

「迷惑だなんて思ってねェ。むしろ、もっと…」

もっと、甘えて欲しいぐれェだ。

「俺では頼りにならないか?」

「そんなことないよ!」

「だったら…。」

俺と距離を置くな。

「俺は迷惑なんざ1ミリも思ってねェから気にするな。」

「…ありがとう」

名無しさんが照れ臭そうに俯いて笑った。

その仕草に俺はたまらなく嬉しくなり、名無しさんの顔を覗きこんで手を繋いだ。

解かれるかと思ったが、逆に握り返され、俺もまた握り返した。

「じゃ、行くぞ」

「…うん」

公園の駐車場までの道の途中名無しさんが、今日から安いビジネスホテルにでも泊まると言い出した。

もちろんそれを俺が許す訳がない。

名無しさんを自分の部屋に置きたくて今日は邪魔しに付いて来たのだから。

「だから、さっきも遠慮すんなって言ったろ?住む所が見つかるまで俺んちに居ればいい」

「でもっ」

「襲われるとでも思ってんのか?いくら好きでも想われてねェのに襲わねーよ。寝室、使っていいから。俺はリビングで寝る」
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