キミのとなりで
□キミのとなりで3
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間髪入れずに私も速攻否定した。
「私みたいなブスを彼女に間違えられるなんて神田さんに失礼ですよ!」
「だあって、神田くんが女の子を部屋に…しかも泊めたなんて初めてだよ?」
「そ…そうなんですか?」
私が初めて…?。嬉しい…。なぜか私は素直にそう思った。
「うん」
そう頷いた糸目の笑顔のコムイさんは室内に干されている洗濯物をジーッと見つめ、私の洗濯物を指差しながら「ねえ?ほんとに付き合ってないの?」と言った。
「きゃ…きゃあ!」
私は顔を真っ赤にしながら猛ダッシュでそれらを引きちぎり、寝室へ駆け込んだ。
もう!恥ずかしい!
私ったら神田さんに洗わせた挙げ句、神田さんに干させちゃって、神田さんどう思ったかな?
私はとりあえず洋服を着替えることにし、トランクを開けて洋服を出した。
開けてみてから私は改めてロクな服を持っていないことに気づいた。
6年は着てるTシャツと3年履いてる膝上のデニムスカートを履いた。
そして今になって気付いた。
私は恋に盲目になっていてティキに貢ぎすぎた…と。
彼に欲しいものがあると言われればその都度お金を渡していた。
私って都合のいい女だったんだね…。
そんな奴だったとしても、失恋から1日も経っていない私は正直、まだティキのことが好きだった。
携帯を開いてみるが誰からも何も来ていなかった。
そのことに対し、さびしくなって涙が出る。
「うっうっ…」
私は泣きながら借りたベッドを整える。
私が使用したものとはいえ、皺無くきれいにメイキングしてから返すのが筋だと思ったからだ。
しかし、大きいベッド…。
男の人だし、スタイルも良かったし、普通のベッドじゃ足がはみ出るのかな?
それからトランクの中を整理して「ふぅ…」と息をついた。
だるい。
まだ熱があるっぽい。
顔も洗いたいなあ。
洗面所を借りたいんだけど洗面所に行くにはさっきのコムイさんって人の前を通らなければならない。
「よし、目やにが付いたままじゃ外にも行けないもんね」
そう独り言を言い、私は先ほどのリビングに向かった。
とりあえずそっとドアを開けコムイさんの様子を窺い、彼と目が合うと愛想笑いを浮かべて中に入った。
「なにかな?」
あの糸目の笑顔を私に向けるが私を見る前は何かの書面、私には手紙のようなものに見えるけど、コムイさんはいくつもある封筒の中から一つの手紙をじっくり見ていた。
「あ、洗面所を借りようと思いまして…」
「どうぞ。…って僕んちじゃないんだけどね」
「あの…」
私はコムイさんの正面にやってきて声を掛けたがコムイさんはコーヒーテーブルに散らかったそれらを私に見せないようにするようなことはしなかった。
「なに?」
「何をしてるんですか?」
「神田くんの次の仕事を選んでるの」
神田さんの次の仕事?
コーヒーテーブルの上を観察すると、その手紙たちは3つに仕訳されている。
優先、どうしよっかな、ボツ?の順かな?
手紙は全国から来ているようで、いろんな便箋、いろんな文面で様々だ。
「ファンレター?」
もしかして神田さんって有名人?すごい納得。
俳優さんみたいだったもんね。
「私、テレビを観ないんで神田さんが芸能人だったなんて…」
私がそう言うとコムイさんは小馬鹿にしたように笑って否定した。
「あはは、違う違う」
「え?」
「神田くんは芸能人なんかじゃないよ?これはどれも仕事の依頼。全国からのSOSだよ」
???
私の推理力はここでスパークした。