キミのとなりで

□キミのとなりで1
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離してもらったあと、なかなか開かない踏切にその男の人と二人きり…。

なんか、気まずい…。

何か…何か話さなきゃ…

そして私はバツが悪そうにその男の人に声をかけた。

「この辺りに泊まれる所はありませんか?」

ビニール傘を差した彼は少し目を丸くして不思議そうに言った。

「…悪いが俺はそんな気分じゃねェ」

「…ってちがう!違います!決してホテルに誘ってるとかじゃないんです!ほらっ、私、見ての通り寝る所を探してて…」

うう。させ子ちゃんと勘違いされてしまった…。

あ…まだ不思議そうに見てる!怪しまれてる?

「だからって、浮浪者じゃないですよ!ちゃんと仕事もしてます。…たださっき同居人に部屋を追い出されてしまいまして…とりあえず今日、寝る所を探してるんです…」

あ…鼻がムズムズする…

「くしゅん!」

さ…寒い…

急に寒くなってきた…

汗が雨で冷えて、寒い…。

私はトランクを持っていない方の手で温めるように自分を抱いた。

「ねェな」

「そ…うですか…」

タクシーでも捕まえるしかないのかな…。

でもあまりお金を持ってないし…。

「はあ‥仕方ねェな。俺んち来るか?」

「え?」

長髪の彼は首を掻きながら面倒くさそうに言った。

「なんかお前、具合悪そうだしこのまま見捨てたら明日のニュースにでもなってそうだからな」

「でも…」

知らない人だし、男の人だし…なにか悪いことに巻き込まれたら…。

しかしこうして話してる間も雨に打たれていて寒い…。

それから私たちはしばらく彼の家へ行くの行かないのやり取りが続いたが、目の前がふらつくぐらい具合が悪くなってきたので私は首を縦に振った。

「…それじゃあ、今晩だけ…お願いしま…す」

そう言って頭を下げた時、めまいがして私は立っておられず彼の胸にもたれかかってしまった。

「あ!ごめんなさい!」

そう言って彼から離れるも急な高熱でまた直ぐにフラついた。

「おい!大丈夫か!?」

面目ないけど本当に具合悪くて、そのまま彼に肩を支えられる状態になる。

「おい!歩けるか?」

歩けないけど知らない人に“歩けない”と言いにくい。

超イケメンに抱きしめられてるようなおいしい状態だが、そんな下心なんか考えられないぐらい私は具合が悪かった。

「だ…大丈夫です」

はあはあと荒い呼吸を繰り返し、そう言うが彼から離れることが出来ない。

ああ‥ダメかも…足元が酔っ払いのおじさんみたいだ。

「ご…ごめんなさい…やっぱり無理かも…足元がすごくふわふわする…」

「ちっ。仕方ねェな。ほらっ」

彼は傘を閉じて私の前に背中を向けて屈んだ。

「おぶってやるから乗れ」

「すみません…お願いします…」

具合が悪すぎて恥ずかしいとか申し訳ないとか気持ちもどっかにいっている私は戸惑うことなく彼の背中に乗っかった。

そして彼は傘の枝にトランクの持つとこを引っ掛け、それを上手に引きずりながら私をおんぶして歩いた。

「あ…きもちいい…」

彼の背中の広さや温もり、小さな揺れ、とにかく心地が良かったので私はウトウトしながら彼の耳元でそう呟いた。

夢の世界に両足突っ込もうとした時に彼のアパートに着いたようで、私は彼が鍵を開けたりとか階段を登ったりの衝撃で意識が現実の世界に戻った。

あ…着いたんだ…。

虚ろな目で建物を見ると、メゾネットタイプなのかな?
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