キミのとなりで
□キミのとなりで7
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初恋の相手が“ラビ”と言ってたな。
それじゃあ、俺のことを好きだったってことか。
やべっ。
本気で嬉しい。
「な…なあ…」
今の俺の顔が赤いと思う。
「は…はい?」
俺が顔を向けても名無しさんは俺の服を掴んでいた。
そのちょこんとした仕草が心をくすぐる。
それに名無しさんも赤い顔をしている。
いや…これは熱のせいか。
「今すぐ…出て行ったりしないよな?なんならずっといてくれても…いや…なんでもない」
何を言ってるんだ俺は!
「うん今すぐは…止める。さっきは怒っちゃってごめんなさい。でもそれはできないよ…。そこまで神田さんに甘えるわけにはいかない」
「そ…そうだよな」
甘えてくれていいんだよ?
そう言いたいが同棲してた男に振られたばかりの奴に男の俺と一緒に住め…とは言いにくい。
俺の服をぎゅっと掴む名無しさんがうつむき加減で首を傾げ、恥ずかしそうに笑って言った。
「実はね。私の頭の中。すごく混乱してる。だって神田さんがメル友だったラビで、しかもエクソシストで…それに…私のことをずっと好き…って…」
俺は体を名無しさんの方に向き直し、彼女の頭を優しく撫でた。
「名無しさんの髪は柔らかいな‥。好きな気持ちは嘘じゃねェぜ?」
「…そ…そうなんだ…」
名無しさんの顔が更に赤くなった。
「やっぱ嘘だとか騙されてるとか思ってたんじゃねェだろうな」
「あ、う゛…」
どうやら図星だったらしい。
「“あの人、眼鏡外したら顔はいいと思うんだけどすっごく変なの”“気味悪い”“地味でダサくて、根暗…”」
「え?」
「高校時代の俺」
キョトンとした顔で名無しさんが俺を見つめる。
だから俺は自嘲気味に笑い名無しさんの頭をポンポンと軽く叩いて言った。
「俺だって自分に自信なんざねェ。それに今すぐどうこうしたいとは考えてねェし、俺が好きって言ったことは忘れろ。お前だってそのうち俺のこと気味悪いと思うだろうから。それじゃゆっくり休め」
俺は嘘つきだ。
手離す気なんざねェくせに、名無しさんを試すような言い方をした。
彼女の頭から手を離し立ち上がろうとすると右腕を掴まれた。
「ごめんなさい!勝手に触っちゃって!でもこのまま神田さんが行こうとするからっ」
俺はズルい奴だ。
優しい名無しさんなら絶対に引き止めるとわかっていた。
「私は神田さんを気持ち悪いなんて思ったりしない!そりゃあ、まだ怪奇現象にあったわけじゃないけど、もしあったとしたらそのアヤカシに驚くだけであって、神田さんを嫌いになる原因にはならないよ!」
名無しさんならそう言うと思った。
「6年前はメル友だったけど、今はこうして出会えた…。この出会えた縁は切りたくない。だから神田さんの気持ちもちゃんと考える。ただ、今は失恋したばかりで心の整理がつかないけど、ちゃんと整理できたら神田さんとのことを考える」
真っ赤な顔で真剣に言ってくれたのが嬉しかった。
まさかそこまで言ってくれるとは思ってなかったから。
嬉しくて俺は名無しさんをそっと抱きしめた。
壊れ物を扱うかのように…。
「…それならお前に話しとかなければならねェことがある」
そして俺は名無しさんに自分と関わると危険な事に巻き込まれるかもしれないということを彼女の耳元で話した。
“自分に長く関わると名無しさんもアヤカシに狙われてしまう。
アヤカシから守る自信はあるが、こわい目に合わせてしまう。
ましてや自分の彼女なんかにしたら、奴らに狙われる可能性がある…”…と。