キミのとなりで

□キミのとなりで5
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「かっ…神田さん離して!私、汚いから…。」

神田さんは私の後頭部を自分の胸に押し付けるようにして私を抱きしめている。

「私に触れると痒くなったりとかブツブツができますよ!」

「お前、何を言ってるんだ?」

“汚い”と虐められていた時のトラウマは6年経っても消えず、頭のどこかでは自分は汚くないってわかってるのに、今でもできるだけ人に触れないように生活をしている。

「お前は汚くねェよ!」

そう、ティキもそう何度も言ってくれた。

だけど、私のトラウマは消えず、ティキから触られるのは平気になったが自分からは決して彼に触れようとはしなかった。

浮気をされた原因はきっとそれで別れることになった原因も自分が作ったんだ。

「うっ…んぐ…」

こう見えてもティキのことを愛してた。

彼と別れたんだ…と考えると涙が出てきて私は神田さんの胸の中で泣いてしまった。

「ん?どうした?」

私は神田さんの優しさに甘えて声を上げて泣いた。

だが神田さんは勘違いしたようで、パッと私を離して困ったように言った。

「わりぃ!そんな泣くまで嫌だったとは気づかなかった」

「う…うわあん」

「ごめん」

違うの。本当はそのままで良かったの…。

神田さん…勘違いしてる。神田さんのこと傷つけたかも…。

私はその場にしゃがみこんで次から次に流れてくる涙を腕で払い落とし神田さんのせいで泣いてるわけではないことを説明した。

「ち…ちがうのっ!失恋したのを思い出しちゃって!だから神田さんが嫌で泣いてるわけじゃないから…」

すると神田さんも私の前にしゃがみ、そして私の頭をポンポンと撫でて言った。

「なら俺が触ってもいいんだな?」

「ん!?」

つい私の体がビクッと強張る。

頭の上の大きな手がスッと降りてきて私の頬を何度も撫でる。

「…神田さん?どうして?」

どうしてそんな泣きそうな表情で私をこんな風に触るの?

「“どうして”?か…。どうしてだろうな。お前を守るって決めたから…かな」

私、今、口説かれてる?

「ぷっ!」

まさかないない!

私みたいな不細工に惚れる奴なんていないいない。

「お前、人が真剣に喋ってんのになんで笑ってんだよ!」

「ぷっ…だっておかしくて…まさか私みたいな不細工を守るって…」

そう言いながらいつの間にか泣き止んだ私は立ち上がって笑顔で神田さんの右手を指差して言った。

「その手、ちゃんと洗った方がいいですよ?」

そしてシャワーを借りようと洗面所兼脱衣所に向かった時、右手首を神田さんにガシッと掴まれた。

「ちょっ…離し…て」

神田さんの表情が怖いぐらい真剣だった。

「お前は汚くなんてない!」

そう大きな声でゆっくりと私の目を見て言った。

「お前を触っても痒くはならねェし、できものだってできねェ。お前、アホじゃねェのか?お前にそんな力があるならとっくに隔離病棟行きだろ?」

「だっ…て」

納まった涙がまた溢れ出そうになる。

「昔、私に触れた同級生にじんましんができた。もともと虐められてたし、直ぐに私のせいだって責められた。その日から卒業するまで誰も私に触れなかったし、私も触らないように細心の注意を払った…」

なんで私、神田さんにこんなこと話してるんだろう。
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