キミのとなりで

□キミのとなりで5
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「怒ってねェけど呆れた。何回言えば信じてもらえるのか。お前は汚くないし、可愛い。お前は昔のトラウマで病んでるだけだ。そいつらがお前に言ったことは全部嘘だ。過去に苛めた人間より俺を信じろよ」

「う、うん」

あまり納得いかないという風に名無しさんは頷いた。

コイツがこうなったのは半分は俺のせいだからな。

「俺はこうしてお前と関わりを持てるのが嬉しい」

「え?」

「手が止まってるぜ?とっとと食えよ?」

「う、うん!」

名無しさんはサンドイッチに小さくかぶりつき俯いてむしゃむしゃと食べている。

何かの小動物みてェだ。

「次は俺のことを話していいか?」

そう言うとキョトンとした目で名無しさんが俺を見てきた。

「俺だってお前と似たような人生だぞ。“どこが”って面だな。まあ、幼い頃から高校まで友達なんざ一人もいなかったな。」

「どうして?」

「人に見えないものが見えるから気味悪いとさ。それに学生時代は見た目も暗くて地味だったからな。ちなみにお前と同じ高校だ」

「え?ええ!?」

名無しさんは目ん玉ひんむいて驚き、サンドイッチの片側のパンがベロリとめくれ、中の具のシーチキンがテーブルの上に落ちた。

「ああ!!ごめんなさい!」

「いい。拭けばすむことだ」

そう言って俺は席を立ち濡れた布巾を用意し、名無しさんが零した箇所を拭いた。

「神田さん、ありがとう。でも神田さんみたいなかっこいい人なんていたかな?学年が違うとか?」

「期待外れで悪いが俺はお前と同じ歳だ」

シーチキンとマヨネーズで汚れた布巾を水で洗いながら続けて俺が言った。

「だから言ったろ?地味に過ごしてたって…。陰気くさいのが漂ってきて気味が悪いんだと。だから誰も寄って来なかったな」

俺がそう言うと名無しさんの瞳が潤んできた。

「神田さん…」

思わず身構えてしまう俺。

「な…なんだ?」

「同士?」

名無しさんが嬉しそうにニヤリと笑ったので俺もニヤリと笑い返した…。





つづく



20100914
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