サプライズ小説

□金木犀
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告知無しサプライズミニ小説(?)


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お前がいつか話してくれた夢。

真っ白のウエディングドレスを着て
バージンロードの先に俺がいて
差し出された手のひらに自分の手を重ねて、見つめあい、みんなに祝福されるのが夢だって…。

そんな囁かな夢ですら、俺たちは叶えられないんだ。

俺はその時、鼻で笑ったが、本当はお前とそうなりたいって思ってた。

一人で眠る夜にお前と一緒になれたらって考えたこともある。

いいよ?

一緒になろう?

そう言えないまま、俺はここで朽ち果てていく…。

だが、言わなくて良かったかもしれないな…。

そんな約束をしたら、お前は一生、俺を待ってる気がする…。

待たなくていいよ?

『ユウくんと私の子供ならきっとかわいいよ』

そう笑顔で話したお前が瞼に浮かぶ。

ガキなんかいらねェって言ったのは本心だ。

俺はお前さえいればそれでいい。

あいしてる…。

あいしてる。

愛してる!

もっといっぱい言ってやれば良かった…。

後悔ばかりが胸に残る。

生きたい。

もう一度、お前に逢って…。

だ…めだ。

目も見えない。

真っ暗だ。

音も聞こえない。

わかるのは、金木犀の花の香りと、肌に当たる風の感触だけ…。

おれ、もう…だめみたいだ…。

もう、守れねェ。

あと…できることは、この風になって、お前の下に花の香りを届けること。

いいか?

今から…お前のところに届ける…からな…待って…ろ…よ…

さ…よなら…あい…してるよ…、しんでもずっ…と…

あぁ…

も…う…なにも…か…んが…え…らんね…。



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某任務地。

あなたの頬に優しい風が吹いた。

花…の匂い?

髪を耳にかけ、振り返ると一面の砂漠地帯。ここに花なんてない。

「どうしたの?」

先を歩くリナリーが立ち止まり、首を傾げる。

「あ…今、金木犀の香りが…」

「金木犀?変ね。ここには金木犀どころか、雑草も生えてないわ」

でも、この時、確かに金木犀の香りがした






20100507

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