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□それは小さな
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胸にチクリとした痛み
それは甘美な、だけど鋭く深く刺さって来る小さな棘

(あ、また…)

『呪』とは違う胸の痛み
それは不意にやって来る


「………」
「どーしたのー?秋桜ちゃん」
「ファイ…」


ここ、ぎゅーってなってるよ
そう言って彼は秋桜の眉間に指を当てる
同じ所を指で押さえて苦笑した


「少し寝不足でね」
「それはダメだようー。お肌の大敵だよ」
「ちょっと読書に熱中しちゃったのよ」


ここ最近ずっと本を読み続けている秋桜
今もそう。ソファに腰掛けて分厚い本をずっと読みふけっていた


「オレお茶淹れてくるねー」
「手伝うわ」
「だーめ。休んでて」


立ち上がろうとした秋桜の肩を押さえてにっこり笑うファイ
彼の直接的な優しさが今は身にしみる


「有り難う」
「秋桜、眠たいの?」


ひょっこりと隣に腰掛けて来たのは大事な大事なお姫様
首を傾げてくる彼女の頭をそっと撫でる


「少しね。最近暖かいし」
「気持ちいいよね。わたしも眠くなりそう」
「寝てていいわよ」


ううん、と首を振るサクラ
最近はようやく日中起きていられるようになったのが嬉しいのだろう
だけどやはりうとうととしている


ぽてっ

「お待たせー…サクラちゃん寝ちゃったの?」
「ええ」
「秋桜さん、これ…」
「ああ、有り難う」


小狼がブランケットを持ってきてくれた
すっかり夢の世界に旅立っているサクラにかけてやる


「可愛いねー」
「そうね」


起こさないようにそうっと頭を撫でる秋桜
ぱったりと彼女の膝で寝込んでしまっていた


「ここで寝てていいんですか?」
「夕方になって冷えて来たら黒鋼に運ばせるわよ」
「…人をパシる前提かよ」


あ、いたんだ

さっきからずっといたっつーの
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