語られなかった世界

□幼い心に芽生えた笑顔
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「秋桜ー」


それはまだ3人が出会って間もないころのお話。




「なーに桃矢?」
「さくらがいなくなった」
「また?」


呆れて物も言えなくなったこの少女は秋桜。
玖楼国を守護する巫女…の見習い。


対するこの少年は桃矢。
現王クロウの息子であり王子。


「最近多いわね」
「あの小僧が現れてからだ」


ふん、と物凄く不機嫌そうな桃矢に苦笑する。
彼は昔の秋桜に対してそうだったように最近現れた小狼が気に食わないらしい。
まぁ一過性のものだろうと秋桜や雪兎はあまり気にしていないが。


「私はいい子と思うけど…ごめんって。睨まないでよ。
 さくらのいる場所なら心当たりあるから探してくるわ」


もう何度目かも知れぬお姫様の捜索に出かける巫女であった。


今までの経験からさくらはおそらく小狼の所にいるだろう。
考古学者である藤隆と共にこの国を訪れた少年。
彼にさくらが惹かれているのは間違いなかった。
そして、小狼もまた……


(ダメダメ。今はそんな事考えてる場合じゃない)


ぱたぱたと2人の行きそうな場所へと急ぐ。
子供の足だ。そう遠くは行かないだろう。
ふと先日の記憶を思い出した。
そしてこの時刻。

きっとさくらは…
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