素敵頂夢

□オキナグサ
1ページ/1ページ

今回は、羽根も感じられない国に少しだけ滞在。
秋桜はよく分からないけれど、綺麗な花がたくさん咲いている。


『あ、オキナグサ』
「おきなぐさ?」
『うん』

昔の思い出が詰まっている、花っぽいもの。
正確には小狼との思い出。


「花言葉は確か、”何も求めない”、”背信の愛”、”清純な心”、”華麗”ですよ」
「へぇ〜。小狼くん物知りー」
「スゴイスゴイー!!」
『…』

それは決して綺麗ではない花。
けれど、しっかりした花言葉がつけられている
でも小狼は一つ忘れている。
忘れていた言葉は、今の私にも
昔の私にもしっかりとあてはまっている。

オキナグサを見つめ、ぽつりと呟く

『”告げられぬ恋”…』

それが聞こえたのか、黒鋼は私に目をやる
いつもより数倍眉間に皺を寄せ、どかっと横に座る
何気ない黒鋼の優しさなのか、私の頭に手を乗せながら。

『昔の思い出、なのよ』
「あ?」
『さくらの記憶が飛び散る少し前のこと』
「…」

私が話し始めると、やっぱり静かに聞いてくれている。
それに甘えて、繋げて話しつづける

『こんなに凄い花畑程ではなかったけれど、大きい花畑だった。
やっぱりそこには私とさくら、それに小狼が居たの。
それでたまたま、この花を見つけて…
小狼が言ったの。
「華麗って、秋桜様みたいですね」って
そんなに綺麗なものじゃないのにね
嬉しかった』

やっぱり小狼は忘れてるよね
そう言うと、さっきまでのしかめっ面を困った顔に変えて、黒鋼は言った

「あの小僧が、自分の言った事を忘れるわけねぇだろ」
『ふふふ、ありがとう黒鋼』
「…おう」

少し照れながらそっぽを向いた黒鋼に思いっきり抱きつくと、驚きつつも受け止めてくれた
あんまり甘えると黒鋼が怒ると思い、すぐに体を離す
すると、後ろから小狼が大声で私の名前を呼んだ
振向くと、意外にも近くに居た小狼に驚きながら「何?」と聞く

「えっと、特に何も無いんですが…」
『…え?えーっと…』

それじゃこっちが困る
困った顔をしながら黒鋼を見ると、そこまでは面倒見れないとばかりに立ち上がる黒鋼。
そんな、助けてよ
精一杯合図したつもりなのに、黒鋼様は立ち去ってしまった(ファイたちの元へ)

二人残された私達
どうしようか、目を逸らした先にあったのはオキナグサ。
話題を変えるためにオキナグサの話を持ち出す

『珍しいよねー、この花…』
「…」
『(まずい。このままじゃ話が進まない)』

黙り込んだ小狼に気まずくなり、立ち上がって戻ろうと提案する
その瞬間、思い切り手をつかまれた。

『う、わ…っ』
「…秋桜さんは、この花覚えてませんか?」
『え、』

どさりと倒れこんだ先は小狼の膝。
頭だけ膝に乗っかって、膝枕の状態
いやいや、普通は逆でしょ
心の中でつっこみながらも、話に思考を持って行く
え、何、もしかして小狼覚えてた?

「華麗、って、秋桜さんみたいだって言いましたよね」
『…うん』
「覚えてましたか?」
『寧ろ、小狼が忘れてると思ってたよ』
「忘れませんよ、あんな恥かしい事言ったの初めてなんですから」
『…』
「…何か言って下さいよ」
『え、あーっと、そう、なんだぁ…』
「…」
『ごめん』
「え!?いや、別にっ」

慌てて否定する小狼を見て、クスっと笑いながら話を戻す

『まぁ、真っ赤だったもんねー』
「言わないで下さい」
『照れてたねー』
「秋桜さん!」
『はいはいごめんねー』

くすくす笑えば、小狼は拗ねたように顔を背けた
それにまた笑うと、それにムッとした小狼が私の顔を自分のお腹に押し付ける
顔が見えなくなり、すぐに顔を放そうとすれけれど、小狼も放す気はないみたいで放してくれない

『ごめんって小狼ー』
「…」

返事がない事を不思議に思い、緩まった手を放しながら顔を上げる
すると小狼の体がぐらついた。
驚きつつも慌てて小狼を支える
どうやら眠っているようだった

『色々あったもんねー…』

安心したように眠る小狼に、少しイタズラをしたくなり、額にキスを落とす
疲労の溜まった顔をしている小狼が、ちゃんと深い
眠りに落ちれるように…



オキナグサ

(その後、つられて眠った私を襲った体中の痛みは小狼のせい)
(その後、起きてた俺を襲ったのは異常な程の心拍数)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ