語られなかった世界

□消えないココロ
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砂漠の国、クロウ国。
この国には若き王と、一人の王女がいた。

その王女に付き従うのが、国の巫女である秋桜である。
だが…



「さくらー!いつまで寝てるのー?」
「きゃー!寝過ごしたー!!」
「ほら、早く顔洗って。髪も凄い事なってるわよ」
「ほええええ!」


実際は、世話係と言った方が正しいかもしれない。
毎朝繰り返されるドタバタ劇を終えて、朝食の席に着くと既にそこには若き王が待ち構えていた。


「おはよう桃矢、雪兎」
「おう」
「お早う秋桜」


さくらは?とは誰も聞かない。
この数分後には…

ばたばたばた


「おはようございます」
「起きたか怪獣」
「怪獣じゃないもんー!!」


今日も始まる兄弟喧嘩。
秋桜と雪兎は日課になっている事には目もくれず、朝食の支度を始めた。


「雪兎、それとって」
「はい」
「ありがと。…よし、準備できた」


てきぱきと無駄のない二人にかかれば時間なんてほとんどいらず、
相変わらず(一方的な)ケンカを続けている兄妹に声をかけた。


「ほら、モモとサクラ。御飯よ」
「誰がモモだ!!俺は犬か!!」


くわっと怒りの矛先を秋桜に向けた桃矢も無視してさくらを椅子に座らせる。
すっかり意気消沈してしまった桃矢を見てさくらが流石…と感心した。


「ほらさくら、見てないで早く食べる。
 今日は出かけるんでしょう?」
「あ、うん!」


慌てて食べ始めるさくら。
ピクリと眉を寄せる桃矢と苦笑する雪兎。

今日は小狼のいる遺跡に行くのだ。
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