記録の巫女

□日本
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砂に囲まれた国、玖楼国
家々が並ぶその一軒の前に少女は立ち止まり手を差し出した

ドンドン


「はい」
「ただいま、小狼」
「秋桜さま!」
「様はいらないって言ってるでしょう」


フードを抜いだ秋桜は小狼と呼ばれた少年に微笑む
彼女を家に招きつ尋ねた
ふぅ、と息をついて外套を脱げば見事な黒髪が顕になる


「いつ帰ってたんですか?」
「敬語もいらないってば。たったいま。小狼も今帰ってきたばかり?」
「え?」
「まだ部屋が使われてない感じがしてる」


相変わらずの観察眼の彼女に感心しながらそうです、と答えた


「先ほどさくらが来ていたばかりなので」
「…そう。お城の鐘がさっき鳴ってたからもう帰っちゃったの?」
「ええ」


入れ違いかー、と苦笑する
それもそのはず。秋桜にとってさくらは大切な従妹なのだから


「もう城には戻られたんですか?」
「…まだ。今から帰ったら桃矢のお小言が飛んできそうだし」


肩をすくめて笑う秋桜
大の男相手にも屈しない彼女にとって唯一の弱点が王族兄妹
彼らにはどうしても敵わないのだ


「小狼の明日の予定は?」
「遺跡の調査です。更に深いところまで行ける事が新たに発見されたので」
「そう…。私も見に行こうかな」


遺跡の事となると熱くなる小狼
新たに見つかった遺跡の奥に目を輝かせていた
すると彼女も興味深そうに窓から遺跡を見やった
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