堀鐔青春白書

□TRIANGLE
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どうして教師というものはこうも忙しいのか
そんな事を思いながら秋桜は溜まった仕事を片づけるべく研究室へ向かっていた

授業の準備、テストの作成、担当クラスの仕事、自分の研究、理事長の雑用…おっと、これが3割を占めている

(忙しいのは侑子さんから雑用押しつけられてるからってのも絶対あるわね)

半ば舌打ち気分で廊下を歩く。今日もまた家に帰れそうにない。そろそろベランダの植物たちが心配だ

(…仕方無い)

また小狼に頼むか
お人よしの彼が断るという事はなかろう
申し訳ないとは思うが枯らしてしまうのも可哀想だし、それだけの為に家に帰るのも時間が惜しい

そうときまればポケットの中の鍵を握りしめて彼の元へと急ぐ
放課後だけあって廊下を歩く生徒の数はまばらだった





「小狼君?さっきさくらちゃんと図書館に行きましたよ」


えぇー、と肩を落とす
四月一日曰く皆で勉強会をするので席を取りに行ったとか


「テスト前だものね」


図書館は割と遠い位置にある。これだからマンモス校は…


「用事があるなら呼び出した方が早いんじゃないですか?あ、なんならおれ伝言しますよ」
「ううん。頼みごとで呼び出すのは可哀想だもの。四月一日君も勉強頑張って」


彼に礼を言ってB組を後にする
とおりかかったC組を見て小龍に頼もうかとも考えたが自分のクラスのバスケ部員がテスト前も部活があることにぼやいていたのを思い出して、やめた

軽く息をつきながら図書館へと向かった





(あ、いたいた)

だだっ広い図書室を歩いていると向こうで机で勉強している見慣れた後姿を見つけた
声をかけようとしたその時、さくらが小狼に声をかけた
そのまま彼の隣に座って教科書とノートを開きだす
場所が場所だけに大声こそ出さないものの、至極楽しそうな光景だった

体の動きが止まる
しばらく感情のこもらない瞳で眺めていた秋桜だったが、やがて踵を返して歩き出した
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