trip of memory

□01 目覚め
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「…その格好を見ても、どこの部族かわからないしな…」
男が頭をかきながらポツリと言う。
「敵意は感じられないし、そういうことなら私の村に来なよ」
「…え?」
「だーかーら、私の村に来いって言ってんの。どっちみち、ここにいても何もできないだろ?」


急に「来い」と言われても…と俺は渋ったけど、相手の押しの強さとメリットを考え、ついていくことにした。


「ありがとう。えっと…」
「…?あ、私の名前はウィル。よろしくな」
「よろしく、ウィル。俺は…」


――名前、なんだっけ?


忘れてた。俺、記憶ないんだった。
名前を言いかけた俺にウィルは声をかけた。
「なんか身に着けてたものに書いてない?」
「身に着けてたもの…ねぇ」
そういうと俺は自分が持っていたもの・身に着けてたものを確認した。普通、最初にすることなのだろうが。


首にかけていたペンダントをよく目を凝らして見てみると、うっすらと文字が彫られていることがわかった。
「…?何語だ?これ…。初めて見るぞ」
「…ケイコ
「…読めるのか?」
「うん。たぶんケイコって書いてあると思うんだけど…」


――女か、俺は。と思わず突っ込む。
冷静に考えれば、コレは俺の名前じゃない。っていうか、そうであってたまるか。
でも、他に手掛かりはなかったし…。どうしたもんかと悩んでいたら、ウィルが言った。
「じゃあ、名前はケイだな」


こうして、俺の名前はケイに決定。
…仕方ないのかもしれないが、何か釈然としない。もっとこう、カッコいい名前がよかったのに…。


「じゃ行こうか、ケイ」
そんな俺の思いとは裏腹に、ウィルはそういうと、道を歩き始めた。ウィルの中では俺の名前はケイに定着したようだ。
今更変更してもなぁ、と半ば諦めの気持ちが入っていたのもあり、俺はしぶりながらウィルの後ろについていった。


1話目がこんなグダグダでいいのかよ…(泣)俺も流されやすいなぁ。










―――――










時間で言えば1時間ぐらいだろうか。先程の湖からウィルにつれられて来た場所は、森の中にある小さな村だった。まばらに歩いている人達は、細部の色こそは違うが、ほぼ同一のデザインの服を着ていた。ウィルの話では、このように統一することで同じ部族であることの意識を高めたり、他族との混同を避けたりできるらしい。


村に入ってからしばらくして、ウィルが指を指した。
「あれが私の家だ」
「…どれ?
俺が首を傾げる。ウィルが指を指した先には、一本の木があるのみ。
「どれって…あの木だよ」
「…」
言われても納得しない俺を見て、ヤレヤレと肩をすくめるウィル。
ついてくればわかるよ、と言うウィルの言葉を聞き、先程と同じようについていく。


ようやくその木の手前に着いた。さっきいた位置からは見えなかったが、この木にはハシゴがついていて、それを昇るとウィルの家につく、ということだ。
なるほど、木の上だったんだな。他の家は普通に地面に建ってたし、家が木でできてるもんだから、パッと見ても気づかないだろう。


ようやくウィルの家に着いた俺らは、荷物(俺は持っていないが)を置き、とりあえずくつろいだ。


――と同時に、俺のお腹が音を発した。唐突なことに驚く。
「…」
「…ケイ、なんか作ってあげるよ」
ウィルが俺の様子を見て台所へ向かった。
ありがとう、とへたれながら俺はお礼を言う。最後に食べたのはいつなのかわからないが、少なくとも湖で目が覚めてからは何も食べてない。
いつ食べれるかはわからないから、食べれるときにしっかり食べておこう。








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