treasure
□危険な遊び
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『アリス、捕まえた!』
離した手でアリスの手首を掴み直すと掌を上に向けた状態で固定し、懐から取り出した何かをアリスの掌に押し付けた。
「えっ、な、なにっ!?」
痛い!と一瞬思って手を引こうとしたが、痛くはない事に気付いて、アリスはそれを止めた。
周りからは盛大な溜息が聞こえ
『あ〜っ!』
エリオットと双子は、足を止めてその場に頭を抱え座り込んだ。
訳の分からないアリスは恐る恐る掌に視線を向け、そこに不可解なものを見付ける。
右の掌には『ブラッド』
左の掌には『ボリス』
掌には赤い字でそれぞれの名前が書かれたハンコが、ポンと押されていた。
「ね、これは一体どういう事?」
座り込むエリオットと双子を眺めて、やや満足そうなブラッドとボリスを眺めて、そして自分の掌を眺めてアリスは問いかけた。
「鬼ごっこが終わったんだよ、お姉さんが捕まっちゃったから。」
「あーあ、僕たちが捕まえる筈だったのに、ショックだよ……」
双子はヨロヨロと立ち上がると、本当に悔しそうに項垂れる。
「ま、猫もいるのはアレだが、ブラッドが捕まえたんならいいや。」
対してエリオットはもう悔しがっている様子はなく、立ち上がると頭を掻いてハハッと笑う。
「えっ、捕まったって……えっ?」
アリスはまだ理解出来ていない。というより、理解したくない。あえてブラッドとボリスには視線を向けず、エリオットと双子を見る。
アリスの気持ちを十分分かった上で、ブラッドとボリスはアリスを見つめ
「私は鬼だ。」
「俺は鬼だよ。」
アリスにとっての衝撃の告白を、何の前置きもないままアッサリとした口調で紡いだ。
「お嬢さん、君は開始の合図と共に、走っていってしまっただろう?実はあの後、ちょっとしたルール変更があってね。」
「色々変わったけど一番重要なのは、全員が鬼になったって事かな?何しろみんなアリスに命令したいって言うから、アリス以外の逃げる役なんて必要なくなっちゃった。」