treasure
□危険な遊び
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時間帯は昼
場所は帽子屋ファミリーの敷地内
慌ただしい足音と荒い息遣い、ヒラヒラの可愛らしいスカートが騒々しく揺れる。
逃げて
逃げて
捕まったら駄目
捕まったらオシマイ
もう逃げられない
だから逃げて
速く速く
遠くへ遠くへ
私の足
心の中で叫びながら、後ろを振り返る事も出来ない程、アリスは必死に走り続けていた。
「ハァ、ハァ……いつになったら時間帯が変わるのっ!?」
変わって欲しくない時は、あっという間に変わるのに、変わって欲しいと願う今は、いつまで経っても変わらない。
焦る気持ちと疲労から、見付からないようにと喋る事を我慢していたアリスだが、遂に我慢が出来なくなって口が開く。
「気まぐれにも程があるわよっ、早くして〜っ!!」
思わず大声で叫んでしまってから、マズいと口に手を当てる。が、それこそがマズかった。
普段ならこんな事はないのだが、その動作がバランスを崩すきっかけとなり、震える足がもつれてそのまま地面に突っ伏してしまった。
運悪くそこは土が剥き出しで、ズザザーっと派手な音と共に砂埃が舞う。と同時にそれ程遠くない所から、聞きなれた声が聞こえた。
「聞こえたかい、兄弟?」
「聞こえたよ、兄弟。きっとお姉さんだね?」
「そうさ、そうに決まってる。必死で逃げて転んだんだよ、お姉さんしかいない。」
「必死で逃げるなんて、お姉さんしかいない。だって―――」
『僕たちはお姉さんをどうにかしたくて、追いかけているんだから。』
綺麗に重なる恐い言葉
アリスは急いで立ち上がろうとしたが、それは叶わない。
何故なら2人分の手がアリスへと伸び、簡単にその体を植木の陰へ引き摺り込んでしまったから。
アリスはもう逃げる事が出来なくなってしまった。