愛しく賑やかな日々〜英凛学院物語 三部〜

□愛しく賑やかな日々〜英凛学院物語 三部〜
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愛しく賑やかな日々  〜英凛学院物語〜

再会

「あれは・・・・。」
あのパーティから悠夜の日常は変化を始めた。
今日のように、三谷物産本社で叔父の業務の見学も義務のように発生している。
多忙であったがその日常は良い緊張感とやりがいに包まれて心地よかった。
そんな中、ふと秀が足をとめた。
「どうしたんだ?」
「すいません。ちょっと待っていていただけますか?」
「えっ、いいけど」
秀が悠夜を待たせるなどはじめての事だ。
小さく会釈すると、少し離れた場所にいる人影に近よっていく。



「覚えていますか?」
秀はその人に声をかけた。
ありったけの勇気を振り絞って。
その人は、青年は少し驚いて、次の瞬間にはとても嬉しそうに笑う。
「忘れないさ。秀。元気だったか?」と


彼は、永野 祥(ながの しょう)
かつて兄と呼んだ人だった。



「今はkannzeの秘書室に。」 
秀は懐かしい人と再会し、また彼が変わらず微笑みかけた事が嬉しかった。
「ああ。まだ一番の下っ端だけどね。」
近くの喫茶店に二人を誘い近況報告をする。


兄である祥は、かなり優秀でkannze本社の営業部でかなりの好成績を収めていたという。
ただ、上司がその功績を自らの功績としていた。
神瀬 崇瀬が総帥に就任するにあたり、秘書室へ移動を命じられた。
「すごいな。今の秘書室って精鋭揃いって叔父さんがいってた。」
悠夜が言う。
「精鋭ねぇ。会長で十分な気がするけど・・・・。」
ため息一つ。
kannze社内の人間のため彼は崇瀬の事を会長と呼んでいる様だ。
「そんなにすごいんですか?」
悠夜も秀も興味がある。あのパーティであった人。
「ああ、すごいよ。それ以外言葉が見つからない。」
秀の兄という人はとても優しい話し方をすると悠夜は思う。
「一度しかお会いした事はありませんが、とても存在感のある方だと思いました。」
あの時の崇瀬の姿を思い出すだけで身が引き締まる。
「話題になったよ。kannze(うち)の会長が、珍しくにこやかに声をかけって。
さすが、館木圭司さんの息子だと、みんな感心していた。」
「そんな、違います。俺は和早の友達だから。ただ、それだけで。」
あわてたように言う。
「そうかな、そんなに甘い人ではないよ。会長は。」
短い間であるが側にいてそう切実に思う。

ぶるぶる ぶるぶる
メールの着信で、それに目を通すと秀は、軽くため息をつく。
「呼び出しなんだ。悪い、社に戻らなければいけない。また今度ゆっくりと話をしよう。」
祥は名刺を取り出し、裏に自宅の住所と個人のアドレスなどをメモすると秀にわたす。
ポーズではない、『また、今度』という事が秀には嬉しい。
「すいません。いま事情で、三谷の家をでていて、まだ新しい住居がきまっていなくて。そのかわり。」
そう言うと、秀は自分の携帯の番号のメモをわたす。
「じゃ、また。」
祥は喫茶店の伝票をとると席をたった。
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