図書館保管庫

□いっしょに寝よう。
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いっしょに寝よう。








…今日の天気は朝方は晴れますが、夕方からは長時間雷雲が続くと見られるでしょう。次は占いのコーナーに…

何故こんな日に限って天気予報を見なかったの?…今となると自分がとんでもなく馬鹿らしく見える。

あと、何があって今ここにいるのか。

事の成り行きはお昼にかかってきたお父さんの電話。

♪♪♪♪… ♪♪♪♪…

ピッ

「もしもし?お父さん、どうかしたの?」

森 あいは特に何も考える事無く自分の父親の電話に出た。

そう…これから何が起こるかも知らずに。

『あい!いきなりで悪いんだが、今日は植木君の家に泊まってくれないか?』

え?今なんと。

植木の家に…

植木の家に泊まってくれないか!?

「えぇぇえーーー!?!!それ、どういう事!?」

森のお父さんいわく、こういう事情らしい。

一日で帰って来るハズだった出張。だが、取引先の相手の方が北京にいたため、一泊泊まって行く事になり、家には帰って来れないらしい。

お母さんは元々三日間の出張で、家にはいない。

だが疑問である事が一つ。

「事情は分かったけど、何で植木の家!?普通の友達の所でもよかったでしょ!」

『取引先の会社の近くで植木君のお父さんに会ったんだよ。』

…はぁ。もう話しても無駄だ。確かに植木のお父さんはそういう事をすぐに受け入れてくれる人だから気持ちは分かるよ?…植木はこの事知ってるのかなぁ?

『あい、そういう事だから頼んだよ!』

ピッ!

ツー… ツー…

切れた。


しょうがない。植木の家に行くか…。




ピンポーン ピンポーン

「…よぉ。父ちゃんから話は聞いてる。オレの家に泊まるらしいな。」

話は聞かされてるのか。アレ?それにしてはいつもと変わらない表情ね。アンタには緊張って物が無いの?

「森?…ぼーっとしてないで上がって。」

「あ…うん。」

それからはというと、私は植木といつも通りに話したり、テレビ観たり、夕飯を一緒に作って過ごした。


雲行きが怪しくなってきた。漆黒の空に灰色の煙が広がってくる。



「植木−。お風呂上がったわよ−?」

「おー。」

そんな呑気な声で洗面所に入って行く植木。



植木がのんびり湯に浸かってる間に、灰色の煙が涙を流し始めた。


ポタポタと降っていた涙はやがて滝の様に流れて地面にたたき付ける。



ゴロゴロ…



ついに煙が恐ろしい唸り声をあげ始めた。



ガチャッ…



調度植木が着替え終わって洗面所から出た途端だった。



ピシャーーーーーーーーーン!!!!!!



煙が怒鳴り声を上げ始めた。


雷が鳴り始めたのか…植木がそう思った途端、自分の腰回りが強い力で腕を回されてるのが分かる。


「森…?どうかしたか?」



彼女の声の代わりに、彼女の身体が震えてる事が自分の身体に伝わってくる。



「雷…怖かったのか。」



そう聞くと森が頷くのが何と無く感じる。
湯舟にゆっくり浸かってる場合じゃなかったな…。彼女をほったらかしにして、何も聞こえない場所にいた自分が憎い。



「ゴメン…傍に居てやれなくて。こんな近くに居たのに。」


さっきまで傍に居てやれなかった代わりに、オレも彼女の肩に手を廻して、調度オレが彼女を包み込む体勢になる。







抱き合ってからしばらくすると、森はやっと落ち着いたらしく、オレに何か話しかけてきた。


「…に…ていい?」



「ん?何て言った?」



「一緒に寝ていい?」



は…?今何と。


一緒に…


一緒に寝ていい?



「え…森、正気か?」

だって男と女が同じ部屋で夜を過ごすって…何かいろいろとまずい事があるかもしれないし…。


いや、今森は雷に怯えてんだ。そんな事気にしてたら彼女を安心させる事は出来ない…。


「ダメ…?」


また彼女の声が震えてきた。…今はオレしか森を慰められない。


「いいよ。布団運んでやるから一緒に来い。」


森は「ありがとう。」と言って顔色は少し良くなったが、オレの上着の袖を掴んだまま。

そんなに怖かったんだな。





今、オレの隣には森がいる。だが、何やらまだ怖いらしい。

「…まだ何かしてほしい事でもあんのか?」


もう…十分じゃねぇのか?
オレがそう言いかけた時だ。

「離れたくない…。」


「は?十分近くに居るじゃねーか。」


雷って、人をこんなにも弱く…いや、脅かすんだな。

「…抱きしめて。」


「…。」



しばらくの沈黙。

原因はオレが何も話せない状況だったから。森の要望に対して葛藤してたから。



でも…森が望んでるなら。オレはお前の言う事を聞きたい。



「…いいよ。おいで?絶対離さないから。」



森はオレの布団の中に潜り込んできた。そして、また、オレの身体に腕を廻す。オレも彼女を安心させたいがために自分の腕を彼女の背中に廻す。


…父ちゃん達がいたら、きっと勘違いされるだろうな…。


あったかい…。オレが風呂から上がってすぐなのもあるが、森もオレが風呂から上がる10分くらいしか居間にいなくて…一枚の布団に二人で潜り込んでる。


まぶたが重くなってきた…。森のふんわりした髪がオレの鼻をくすぐる。



雷は、いつの間にか鳴り止んでいた。

オレは森を起こそうと思ったけど、あまりにも気持ち良さそうに眠ってたので、起こす気も失せてしまった。



もしかしたら…自分も雷が怖かったかもしれない。だから森が「一緒に寝たい。」て言ったのを受け入れたのか…?



考えてる内にオレも意識が夢の中に行ってしまった。
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