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□心が痛いよ・・・。
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心が痛いよ・・・。
最近どうして変な自分がいるんだろう?…あいつの事を考えてる時に限っ て、いつもそうだ。今頃になって、その原因は分かった。…けど、オレはどうすればいいんだろう。
「植木ー!」
あいつの声が聞こえる。その度に自分の体に暖かくなるけど、苦しくなる物が込み上げて来る。
「お…おう。森か。」
いつもと同じそぶりをしたつもりだったが、どこかぎこちない。…これじゃあ、さすがに気付かれたか?
「どうしたの?元気ないね。」
…そんな顔でこっち見んなよ。自分の顔が嫌に熱くなってくる。心臓の音もやけにうるさい。きっと、ある呪文を言ってしまえば楽になるんだ。でも、そのせいで君との関係を壊してしまったらオレは…。
「…この頃、自分が変なんだ。」
少し愚痴ってしまった。出来れば君から言ってほしいのに。…オレはこんなに弱い奴だったか?
「は?あんたが変だなんて、いつもの事じゃない?」
きっと森は[ぼーっとしてる=変]とでも思ってるのだろう。頼むから気付いてくれ…!
「そういう意味じゃなくって…なんか、お前の事考えたら体が熱くなってくるというか、苦しくなるというか…。」
言ってるうちにも体が熱くなって、心臓の音も余計にうるさくなる。いい加減、森も気付いたか…?
「私もそんな風になった事…あるよ。」
え…森も?
「いつ…どんな時に森はそんな事が起こるんだ?」
まさかオレじゃないよな…って何自惚れしてんだよ、自分。でも、そうだったらいいなあ…。
その時、森から信じられない言葉が発せられた。
「今隣にいる奴の事考えてる時。」
ふと、周囲を見渡したが、オレと森以外には誰もいない。
「え…。オレ?」
これは信じていい事なんだよな?
「そうよ。…あー!言ってるこっちが恥ずかしいじゃないの!!言いたい事、あるんでしょ?アンタから言いなさいよ!」
「…何を。」
状況がよく飲み込めない。
「どこまで鈍感なのよ、アンタは!…告白したいんでしょ?」
え…それって受け入れてくれるか分からないのに向こうから言う事か?
「森…オレは…オレはお前の事が…。」
言葉がつっかえて上手く話せない。けど、此処まで言ったんだ…!
「森の事が好きだ…!」
これ以上、何も話したくない。それなのに、お前は…。
「だから何?」
は…これ以上言わないといけないのか?
「え…?」
「『恋人になって下さい』…でしょ?」
あぁ、その言葉だったか…。
「オレの彼女になってくんねぇか?」
もちろん君の答えは…
「喜んで。これからもよろしく!…植木?」
言いたい事を言いきると、一気に力が抜けてしまい、オレは森のいる方向に倒れてしまった。
「ちょっと、離しなさいよ植木!」
人の温もりってこんなに暖かいものなんだな…。
オレは何も考える事無く森に抱き着いていた。
自分でも分からないが、オレの目からは涙、涙。何でオレ泣いてんのかな?
「…!…ウッ…クッ、森、目茶苦茶嬉しいハズなのに、何で涙が出てんだろな…?」
「アンタもまだまだ子供ね。」
呆れられた。でも森は笑ってる。
「…そうかもな。森の体、暖かい。すっげー落ち着く。」
関係が壊れる事なく、よけい深まってよかった。気持ちを打ち明けられてよかった…。
森の熱がオレの体に伝わって、互いに己の熱が伝わる。
もう…心が痛む事はなさそうだ。
完