黒月館殺人事件
□第三章
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「……だが、その裏の仕事がばれた時は社員に責任を押し付け、リストラしているらしいぜ。まったく、訳も分からずにリストラされた連中が可哀想だぜ」
にやにや笑いながらそんなことを言われても、何の説得力もない。
それに、今の僕はそれどころではなかった。
「ちょっと待ってください。それって、まさか………」
「あぁ。来沢雅の父親も裏の仕事の責任を押しつけられてリストラされたんだよ」
「!?」
まさかとは思っていたものの、肯定されるとかなりのショックを受けた。
それだけでもかなりショックだったのに、更に笹本警部から驚きの言葉を続ける。
「……そうだ。この話で思い出したんだが、その裏仕事の責任を押しつけてリストラさせる奴らの名前が書いてある紙を見つけたんだったわ」
そう言って、笹本警部が懐から取り出したのは四つ折りに畳まれた紙だった。
それを見た瞬間、僕の頭の中は真っ白になる。
なぜなら、それは充さんのポケットから見つかった殺人予告が書かれた紙と同じように四つ折りに畳まれていたからだ。
「それ、どこで見つけたんですか?」
僕が恐る恐る尋ねると、笹本警部は不思議そうな顔をしながらも答えてくれた。
「……確か、月ノ瀬充の胸ポケットに入っていたが………それがどうかしたのか?」
僕は笹本警部の問いには答えずに、更に質問をする。
「じゃあ、それは殺人予告の紙と一緒に入っていたんですか?」
「……何言ってんのかよく分からんが、殺人予告の紙はズボンのポケットに入ってたぞ。……てゆーか、お前、月ノ瀬充が殺人予告の紙をポケットにしまう所を見たんじゃねぇのか?」
その言葉を聞いて、僕はようやく自分が……いや、自分と笹本警部の間ですれ違いがあったことに気がついた。
そして、その間違いが大きな間違いであったことに。
「……確かに、僕は見ました。けど、それは充さんが四つ折りに畳まれた紙を胸ポケットにしまう所だったんですよっ!!」
「おいおい………じゃあ、月ノ瀬充が必死に隠したのはこっちのリストラする奴らの名前が書かれた紙の方だったのかよ?」
僕はそれに頷く。
「そして、それが真実なら第一の殺人は大きく変わってくる………」
僕は自分の仮説が正しいかを確かめるために、笹本警部にお礼を言ってからある人物の所へと向かった。