黒月館殺人事件

□第三章
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「……じゃあ、早速問題の充さんの事件を考えてみようかと思うんですけど、残念ながら一回談話室から出て行った雅と月ノ瀬さんの行動が分からないんです。だから、まずは雅と月ノ瀬さんがコーヒーを入れていた時の行動を詳しく教えてください」
 僕がそう頼むと、笹本警部はくわえていた煙草を近くにあった灰皿に押し潰した。
 そして、懐から警察手帳を取り出し、ペラペラとページを捲る。
「……月ノ瀬瑠依と来沢雅はコーヒーを入れに厨房の方に行った。雑談しながら、主に月ノ瀬瑠依が仕事をしていたようだな」
「雅は何かやったんですか?」
「来沢雅はコーヒーカップを人数分出したりしていたらしい」
 笹本警部はそう答えると、手帳のページを捲った。
「……で、月ノ瀬瑠依がお客さん、つまりお前と来沢雅の分とその他二人分のコーヒーを持って行くから、他の月ノ瀬の連中三人の分を持っていくように来沢雅に言ったらしい」
 月ノ瀬の連中三人ってまとめすぎだろ。
 まぁ、そんな突っ込みは置いといてあの時のことを思い出す。
「……確か、月ノ瀬さんは僕と雅と自分、あと祥太さんにコーヒーを渡してましたね」
「そして、その残りの月ノ瀬充、翔、愛子に来沢雅がコーヒーを持ってきた」
 ここまでで、なんとか雅達の行動を理解はしたものの、肝心の殺人に関しては何も分からなかった。
 雅が犯人じゃないと言い切るには、あの殺人予告がしてあった紙がネックになっていたからだ。
 あれがある限り、雅が犯人だという説を覆すことはできない。
 僕がため息を吐くと、笹本警部は更にペラペラと警察手帳を捲りだした。
「そういや、関係ねぇ話なんだが、月ノ瀬充の会社は表向きは普通の会社らしいんだが、裏でかなりやばいことしてたらしい」
 笹本警部の言葉に、僕は思わず反応してしまった。
「……それ、雅のお父さんもやってたんですか?」
「いや……社員は普通に働いている。上の幹部だけが裏で仕事をしてる」
「そう……ですか」
 僕としては、雅の父親が裏の仕事に荷担していなくて良かった。
 けれど、心の何処かですごく嫌な予感がする。
 そして、嫌な予感ほど勘というのはよく当たるものなのだ。
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