黒月館殺人事件

□第二章
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 笹本警部は証拠品である殺人予告が書かれた紙を再びしまうと、意味あり気に僕達を見回す。
 そして、ある人物に指をさした。
「この予告状の通りに月ノ瀬充は亡くなった。なら、これは計画的に行われた殺人で間違いない。……つまり、犯人は彼にコーヒーを持ってきた来沢雅、お前しかいないんだよっ!!」
 笹本警部に犯人にされ、雅の顔は真っ青になり、そして何も言えなくなってしまった。
 そんな雅に代わり、僕がある疑問を問う。
「……仮に雅が犯人だとして、何で雅が友達である月ノ瀬さんの父親を殺さなきゃいけなかったんですかっ!?そもそも、月ノ瀬さんが誘わなければ雅はここへは来なかったんですよ?計画なんか立てられるわけ――――」
「果たして、それはどうかな?」
 何故か、意味あり気に笑う笹本警部。
 その笑みが僕を腹立たせることになる。
「それはどういう意味ですか?」
 僕の声がいつもよりも低いせいか、一瞬だけ笹本警部の顔から笑みが消えた。
 けど、深く気にしなかったのか、或いは一般人である僕に怯むわけにはいかなかったのか、笹本警部はまた先程と同じように笑みを浮かべる。
「どういう意味もこういう意味もないだろう。……計画なんて、この家に来ることになった時に立てられるだろう?」
 確かに、計画なら誘われた日から今日まで間があるから立てられただろう。
 だが、肝心の動機が分からない。
 それをもう一度笹本警部に尋ねようと口を開いた時、僕よりも先に笹本警部が喋りだした。
「……それにな、来沢雅にはれっきとした動機があるんだよ」
「っ………!?それは一体………?」
 僕には到底その言葉を信じることができなかった。
 だが、笹本警部の次の一言に僕は絶句することになる。
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