黒月館殺人事件

□終章
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「あーあ、夏休みだってのに疲れたなぁ………」
 そんなことをソファーに寝転がりながら呟くと、近くにいた男がにっこりと微笑んだ。
「冬夜様、本当にお疲れのようですね。……でも、何にそんな疲れたんですか?」
 微笑みながら毒を吐く男を冬夜は横なっていた体を起こして睨んだ。
「……夏木、それは俺に対する嫌味か?」
「いえいえ、そんなわけないじゃないですか。私は本当のことを言ったまでですよ」
「余計質が悪いっつーのっ!!」
 冬夜の突っ込みを笑って受け流す夏木こと、夏木史彦(なつきふみひこ)。
 そんな彼の態度に冬夜はますます怒りを募らせた。
「おい、そんなに俺を怒らせて楽しいか?」
 冬夜がそう問うと、史彦の表情が一変した。
 温厚なまでの笑顔をすっと変え、逆に史彦が冬夜を睨んだ。
「……誰が誰を怒らせていると思っているんですか?」
「はっ………?お前、何でいきなりキレて………」
「とぼけないでくださいっ!!私が怒っているのは月ノ瀬家で起きた事件に関してですよ!!」
 普段あまり怒らない史彦に冬夜は少し驚いたものの、すぐに笑いだす。
「なんだ、気づいてたのか。黒月館で起こった殺人事件が俺の計画したものだってことに………」
「当然です。私は冬夜様と違って記憶力がいいですから………って、そうじゃなくてですね。そこまで分かってるなら、私の言いたいことも分かるでしょう?」
 史彦の問いに、しかし冬夜は答えなかった。
「何を言いたいのか分からないなぁ。ちゃんと言ってくれないと、馬鹿な俺には理解できないよ?」
 先程のお返しとばかりに、冬夜は嫌味を言う。
 史彦は疲れたように頭を押さえると、盛大なため息を吐いた。
「……何で自分で立て、月ノ瀬瑠依に売った計画を壊す………いいえ、暴くようなことをしたんですか?」
「さて、ね。気まぐれじゃないかな?」
 冬夜がはぐらかすような調子で答えると、いきなり史彦は傍にあった机を思いっきり叩いた。
 そして、低く唸るような声で再度喋りだす。
「……じゃあ、言い方を変えましょう。何で、月ノ瀬瑠依を殺さなければならなかったんですか?」
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