黒月館殺人事件

□第二章
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「……では、もう一度お聞きしますけど、月ノ瀬充はコーヒーを飲んだ直後に苦しみだして亡くられたのですね?」
 笹本拓郎(ささもとたくろう)と名乗った若い警部が僕達に充さんが亡くなった時のことを確認するようにそう聞いてきた。
「僕は直接充さんがコーヒーを飲んだのを見たわけじゃありませんから断言はできませんが、多分それで間違いないと思います」
 大分落ち着いてきたとはいえ、他の人達―――特に、娘である月ノ瀬さん―――はまだ顔が真っ青なので、一番冷静であった僕が充さんが亡くなった経緯を話した。
 ちなみに、警察に電話したのも僕だったりするんだけど。
 充さんが亡くなった時、僕は急いで充さんに駆け寄って脈などを調べたが、やはり充さんはすでに亡くなっていた。
 泣きじゃくる月ノ瀬さんを顔色が真っ青な雅に任せると、僕はこの館の電話を借りて警察を呼んだ。
 もちろん、僕が警察に電話したのは翔さん達家族三人も蒼白と言って良いほど顔色が真っ青だったからだ。
 じゃなきゃ、人の家でこんな好き勝手やりませんよ、僕。
 警察は通報が入るとすぐに船でやってきた。
 まぁ、すぐとはいっても本土から孤島であるこの黒月島に来るのに三時間くらいはかかったが。
 そして、鑑識さん達が現場である談話室を鑑識してる間、僕達はあの笹本警部によって食堂に集められた。
 そこで笹本警部は僕が簡単に電話で説明したことを確認するように冒頭の台詞を言ったのだ。
「……ふむ。まぁ、死因はまず青酸カリで間違いないだろう。被害者の口からアーモンド臭がしたしな。問題はそれがどこに入っていたかだが、これもまずは月ノ瀬充のコーヒーの中で間違いないと思う」
 僕が答えたことに笹本警部は頷くと、話を進める。
「……じゃあ、これから定番の個別に事情聴取させてもらうが、誰から聞こうか?」
 しかし、そうは言ったものの、今の状態では僕以外の人はうまく喋れそうにない。
 なので、結局僕が一番最初に呼び出されたのだった。
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