黒月館殺人事件
□第一章
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中に入ると、そこは僕が思っていたよりも普通だった。
思っていたのと違っていたせいか、心なしかがっかりした気持ちになる。
玄関を入ると、すぐ目の前には上へと行ける階段があり、高い天井からはこの空間を煌々と照らす、豪奢なシャンデリアがぶら下がっていた。
これが金持ち、か。
羨ましい。素直に羨ましすぎる!
そんなことを頭の中で思いながら、遠慮なしにあちらこちらを眺めた。
「雅ちゃん、桐生君。先に部屋に案内するね」
「ありがとう。でも、冬夜が来ること言ったのギリギリだったけど、大丈夫なの?」
そういや、僕も一緒に行くというのを月ノ瀬さんに言ったのは一昨日だった。
さすがに伝えるのが遅いとは思ったが、これにはきちんとした理由があるのだ。
その理由というのは、雅がここへ行くことになってたギリギリの日にちまで月ノ瀬さんに僕のことをどうやって説明しようかと―――気まずいから僕を誘ったとは言えないので―――悩んでいたからだ。
一応、僕は「そんなに悩むくらいなら行くなんて言わなきゃ良かったのに」と言ったのだが、雅曰く「瑠依が一生懸命頼んできたから断れなくて………」だってさ。
結局、僕は普通に付き添いとして紹介された。最初からそうしとけば良かったのに。
「大丈夫。部屋は途中で誰かが来てもいいように多くあるから」
さらりと家が大きいことをアピール………はしてないが、大きいことを示唆はしている。
どんなことをすれば、こんな大金持ちになるやら。
そんな疑問を一先ず置いておくと、先に行く月ノ瀬さんの後に続いて僕達二人も二階に上がった。