Short Story
□好きだよ。
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耳元で好きだよ、と囁いた。
周りに人がいようと構わない。
僕は本当の気持ちを伝えたいんだから。
そっと息を止めて、どんな小さな声でも君の反応を確かめようとした。
だけど、何も聞こえない。
僕はもう一度好きだよ、と言った。
おかしいな。
前にこんなことを言ったら、君は真っ赤になって照れたじゃないか。
一緒にクリスマスツリーを見た時にも同じことを伝えたら、君は何も答えなかったけど、繋いでた手をぎゅっと握り返してくれたよね。
冬空の下、とても冷たい手だったけど、気持ちは十分伝わったよ。
なのに、今僕が触れている手は何の温度も無い。
いくら握ったって何も感じない。
まるで、君に拒絶されてるみたいだ。
そんなに君が聞こえないフリを続けるなら、正面から伝えてあげよう。
僕は君のすぐ前で、みなこ、好きだよ、と言った。
周りからすすり泣く声がする。
それでも君は答えない。
しびれを切らした僕は揺すってやろうと肩に手を掛けた。
そしたら、後ろからトシが来て腕を掴み、黙って首を振るんだ。
なんだよトシ
二人だけのときは邪魔するなって
こないだも言っただろ。
不満げな顔を向けたら、眉をひそめて、大丈夫、あいつにも伝わってる、って言われた。
トシにそう言われたら仕方無いから手を離す。
みなこをじっと見つめていると、トシが出棺の時間だ、って僕の身を引かせた。
煙になって、この世界と混ざっていく君を見ながら、そうだ、ありがとうも言うべきだったなぁ、と思った。
でも、君はもう目の前にいない。
どうしたらいいか分かんなくなってトシに聞いたら、それは今度墓参りに行った時に言ってやれって言われた。
それもそうだな
じゃあ、次は桜の咲く頃にまた君に伝えてあげる。
もう見えなくなった君へこれで最後と、好きだよみなこ、と呟いたら
しつこいやつだなってトシに苦笑いされた。
★
かぎかっこを使わないで書きたかった。
親友っていいな。
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