Short Story

□好きだよ。
2ページ/2ページ



耳元で好きだよ、と囁いた。




周りに人がいようと構わない。
僕は本当の気持ちを伝えたいんだから。




そっと息を止めて、どんな小さな声でも君の反応を確かめようとした。

だけど、何も聞こえない。




僕はもう一度好きだよ、と言った。



おかしいな。

前にこんなことを言ったら、君は真っ赤になって照れたじゃないか。



一緒にクリスマスツリーを見た時にも同じことを伝えたら、君は何も答えなかったけど、繋いでた手をぎゅっと握り返してくれたよね。
冬空の下、とても冷たい手だったけど、気持ちは十分伝わったよ。



なのに、今僕が触れている手は何の温度も無い。
いくら握ったって何も感じない。


まるで、君に拒絶されてるみたいだ。




そんなに君が聞こえないフリを続けるなら、正面から伝えてあげよう。


僕は君のすぐ前で、みなこ、好きだよ、と言った。




周りからすすり泣く声がする。

それでも君は答えない。




しびれを切らした僕は揺すってやろうと肩に手を掛けた。


そしたら、後ろからトシが来て腕を掴み、黙って首を振るんだ。




なんだよトシ

二人だけのときは邪魔するなって
こないだも言っただろ。





不満げな顔を向けたら、眉をひそめて、大丈夫、あいつにも伝わってる、って言われた。



トシにそう言われたら仕方無いから手を離す。

みなこをじっと見つめていると、トシが出棺の時間だ、って僕の身を引かせた。







煙になって、この世界と混ざっていく君を見ながら、そうだ、ありがとうも言うべきだったなぁ、と思った。


でも、君はもう目の前にいない。


どうしたらいいか分かんなくなってトシに聞いたら、それは今度墓参りに行った時に言ってやれって言われた。



それもそうだな


じゃあ、次は桜の咲く頃にまた君に伝えてあげる。




もう見えなくなった君へこれで最後と、好きだよみなこ、と呟いたら
しつこいやつだなってトシに苦笑いされた。












かぎかっこを使わないで書きたかった。

親友っていいな。




ご意見・ご感想お待ちしています^^
(その際には読んでいただけたモノのタイトルをお願いします)




.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ