Short Story

□no clear
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「ごめんなさい。」

工藤さんはそう言って、重々しく頭を下げた。


僕はそうか、と思った。

特別期待をしていたワケではないけど、断られることも考えてなかった。

紺のブレザーに赤いリボンが似合う工藤さん。
僕は彼女が好きで、たった今告白したところだった。


「工藤さんは僕のこと、嫌い?」

僕は訊いてみた。
一番緊張する告白部分はもう済んだから、何だか気の抜けた声になった。

不思議なんだけど、あんまり落ち込んでないんだ。

もちろん工藤さんが僕を好きなら、それはそれで嬉しいけど、
まぁ伝えられたしいいかなって思っている僕もいた。


そうじゃないのって彼女は、かぶりを振って答えた。
悪いことはしてないのに、とても悲しそうな、目をして。

それで僕は分かった。

彼女には
他に好きな人がいるんだなって。

工藤さんは優しい人だから、今の僕の気持ちも、きっと自分のことと重ねて、胸が痛んだろう。

彼女もきっと
叶わぬ恋をしているんだろう。


あぁ、どうして
人の幸せを願うのは、こんなにも苦しいんだ。

擦れ違ってばかりで、誰も幸福になれないなら
こんなに切ないことはないじゃないか。

だんだんと沸いてくる冷たい何かで、僕の胸はいっぱいになった。


僕の今の気持ちを
工藤さんんも感じたのかな。

辛かったかな
悲しかったかな

どうして、叶わないのかな



目の前の愛しい人が切なそうに笑うから、
僕はつられて顔をあげて、

そこで初めて、
僕は泣いていることに気がついた。








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= [(ここでは名詞で)余地・空白]


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