SHAMAN KING
□夕焼け色
1ページ/2ページ
「葉、髪型変えてみない?」
縁側でごろ寝する葉をのぞき込む
ハオ。
「オイラより先に、お前の髪なんとかしたほうがいいぞ。」
ハオが上からのぞき込んだせいで、葉の顔にハ
オの髪の毛がチクチク刺さる。
葉はその髪を鬱陶しげに振り払った。
「僕の綺麗な髪がなくなったら、なんだか寒そうに見えるだろ?それに色気も半減してしまう気がして踏み切れないしね。」
(だったらマントの下になにか着ればいいのに、このノーパン男ノーパン男ノーパ・・)
「見えてるよv葉。」
面倒くさい上に人の心が読めるこの男にうんざりするが、いつの間にか葉の腹に乗って腕を組むハオから逃げることも出来ずうなだれる。
「あんな、ハオ、オイラ元々髪の毛がそんな長くねーから変えるっつっても変えようがねーだろ?」
「じゃ伸ばせば良いじゃない。」
か、簡単に・・・。
「というか、僕的には髪型というよりも、首筋に張り付いたちょっと濡れている髪っていうのが理想なんだけど、どう?」
「・・・、どうって・・何がどうなのかオイラにはさっぱりなんだが・・・。てかそれただのフェチだよな?」
葉もハオと同じように腕を組む。
「フェチ・・・・うーん、ちょっと違うよ。僕は色々なシチュエーションを楽しみたいだけなんだ。分かってくれるね、葉?」
「いや、ふつーに分かりたくないな。」
「そうだなぁ、今の長さも絶妙な色気をだす時があるんだけど、僕の髪と絡み合ったりしたらなお良いと思うんだ。うん。」
(人の心も読めるけど、自分の心もただ漏れだな。ていうかオイラの返事スルーされたし)
「でもよ、オイラがハオみてぇーに髪伸ばしちゃったら他のやつに間違われんか?」
顔も体型もほとんど一緒の2人が同じような髪型にしてしまえば見間違えてもおかしくはないだろう。
「それにハオは色々な意味で有名人だからな、うっかりすっと見知らぬやつに殺されかねねーし。」
葉がそう言うとハオは葉の上から降りて、隣に足を組み座った。
「確かに、僕を殺したがるヤツらは間違えるかも知れないね・・・。」
「迷惑な話だな。」
「でも葉を知っているヤツらは僕と葉を間違えたりなんかしないよ。僕とは違う意味で、お前は人気者だから。」
葉はハオの横顔をみた。
いつもと変わらないのに違う。
自分には相手の心を読む能力なんか無いけど、この双子の兄のことだけは、自然と分かってしまう。
「本当は、ただ安心して眠りたいだけなのにな。」
「うん。僕も昔はそれだけを望んでた。」
「おー、やっぱ生まれる前から一緒にいると、たまには同じようなことも考えんのな。」
ハオが少しだけ微笑んだ。
だからちょっとホッとした。
「お前さー、人気者とか言うけどオイラだってみんなに好かれてたわけじゃ無いかんなー。」
「そう?僕にはあの水色のツンツン頭君とかすごく気に入らないんだけどなぁー。」
水色のツンツン頭?
「ホロホロのこと?なんで?」
「葉はまだ知らなくていいよ。」
「んー?」
気づけば夕暮れ時にさしかかり、オレンジ色の光が縁側を照らす。
「オイラさぁーちょっと髪伸ばしてもいいかなって思えてきた。」
しばらく黙っていた葉が言った。
「さっきまで嫌がってたのに、なんで?」
「夕焼けになると、ハオの髪の毛ものすごく綺麗だなっておもったんよ。」
ハオの髪は夕焼けの光を浴びて、風が吹くたびにキラキラと輝いていた。
「それだけ?」
「それだけ。」
「そう、楽しみにしてるよ。」
そう言ってハオは立ち上がった。
「もう帰んのか?」
「帰ってほしくないかい?」
「・・・風呂くれぇ入って行けばいいのに。」
葉も立ち上がる。
「葉がそんなこと言ってくれるなんて感激だけど、今日はちょっと用事があってね。
今度は泊まりにくるよ。きっと君の嫁がうるさいだろうけど。」
「あぁ、待ってる。」
「その時は、“首筋に張り付いたちょっと濡れている髪”やってよね?」
「お前アンナに殺されるぞ?」
ハオは笑いながら葉に手を振った。
葉も手を振り返す。
夕焼けに向かって行くハオの髪の毛はやっぱり綺麗だった。
あとがき→