MARIA

□みっともなくてもいいからさ
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「なぁ、まだ怒ってんの?」




祐麒はリビングに下りてきた祐巳に話しかけた。













数日前、祐麒と祐巳は朝から洗面所の取り合いをしていた。







「ちょっと祐麒遅い!」




「うるさいなぁ、祐巳は時間かかるんだからおとなしく待ってろよ。」





「髪結わけないでしょ!祐麒なんかいつも髪の毛てきとうなんだからいいじゃない。」







なんで祐巳は俺だとこんなにもワガママなんだか、




「たまには髪下ろせばいいじゃん。そっちの方が少しは大人っぽくなるんじゃないの?」




つい俺もムキになり思ってもみないことを言ってしまう。






「なに、それ。いつもは子供っぽいっていいたいの?」




明らかに祐巳の怒りのスイッチが入ってしまう。





「あぁ、特に祥子さん達と一緒にいるときなんかな。」






本当に何言ってるんだ俺は。






「・・・そう、じゃあもう髪結わかない。」




そう言ってあっさり引き下がる祐巳に祐麒は開いた口が塞がらなかった。



なんだよ、いつもは言い返してくるのに・・・。









それからというもの、祐巳は口をきいてくれない。

それから祐巳はあの日以来、髪の毛を結わなくなった。





さらに、追い打ちをかけるかのように、小林からある噂を耳にしてしまう。






「ユキチ、祐巳ちゃんって昨日の花寺のやつとつき合うのか?」




「はっ!?なんのことだよ!」





「えっ、知らないの?言っちゃまずかったかな・・・」






「いいから教えろ!何の話だ」







「昨日、帰りに祐巳ちゃん見たんだよ。
髪下ろしてて雰囲気違かったからドキッとしたんだけど、
丁度そのときに花寺のヤツから手紙もらってたぞ。」





「なんだそれ・・・・。」




魂が抜けていく気がした・・。





「どうしたんだ、ユキチ?」






どうしたもこうしたも・・・・。


手紙?あいつ返事したのか?





「しかし、祐巳ちゃん髪下ろすと可愛いってより美少女って感じになるよなー。」




そう言った小林に一発蹴りをいれ、足早に家へ帰った。










「なぁ、祐巳、昨日花寺のヤツに声かけられたのか?」








返事はない







「あの朝のこと怒ってんなら謝るよ。子供っぽいみたいなこと言ってごめん。」














「・・・なにそれ。」











「?、何って」













「祐麒何にも分かんないんだね。」













「・・・・・」













「私に昔言ってくれたこと、覚えて無かったんだ。」











「昔言ったこと?」
















「私、祐麒がリボン似合うって言ってくれたから、いつも時間かけて結んでたんだよ?」












なんだって・・・。



じゃあ、祐巳が毎朝早起きして髪を結ぶのは、全部俺のためだったのか?









驚きのあまり祐麒は口が聞けないでいた









「いつも私ばっかり余裕無いみたいで、もう嫌。
なんでこんなに必死になってたんだろうって、馬鹿馬鹿しくなったの。
だから祐麒と口聞きたくなかった。」












「ば、馬鹿でいい!!」






いきなりそんなことを言った祐麒に祐巳も、そして祐麒自信も驚いた。











「お、俺のために馬鹿になってくれてありがとう。」








「・・・何言ってるの?」








祐麒は自分の言ったことに恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら、今度は怒ったように階段を駆け上がりながら叫んだ。














「余裕無くて、みっともないのは俺だって一緒なんだからなっ!」









祐麒は自分の部屋に戻ってしまった。












1人取り残された祐巳はすべての言葉を理解して、同じように赤くなった。






「意味分からないよ。馬鹿っ。」





そうつぶやいた言葉とともに、怒りがどこかへいってしまった。













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