MARIA
□少しでも守れるといい
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「どうしたの?祐麒」
俺は祐巳を後ろから抱きしめていた。
「分からない、でも何となくこうしていたい。」
嘘。
いつだって祐巳とこうしていたい。
「何でかな。」
突然そう言う祐麒。
「なんで俺は俺なのかな。」
「・・・・・・。」
「俺いつだって祐巳のそばにいたい。でもこうして抱きしめる時だって、人の目を気にして、罪悪感でいっぱいになる。
触れることの喜びと、罪が一気に押しつけてくるんだ。
いつになったら消えるんだろう。
どこへ行けばなくなるんだろう。」
愛する姉が、歳を重ねるたび大切になる。
そして今までになかった欲望が胸に押し寄せる。
触れたいと想う。
「祐麒、私は祐麒とならどんな罰だって平気だよ。
どんな痛みを受けても、祐麒がそばに居なくなるのに比べたらどうってこと無いんだから。」
祐巳が笑った。
「私、祐麒の腕の中にいるの好きだよ。」
「そんなこと言ったら、マリア様に追い出されるかもよ?」
「そしたら一緒に逃げようよ。
だからどこに行ったって祐麒は祐麒のままでいて。
私は誰よりも祐麒が好きなの。」
「ばかだな。祐巳は。」
「それも一緒でしょ?」
「・・・・・お前は、どうしてそんなこと言っちゃうの?なんで俺が欲しいモノ全部くれんの?」
そう言って祐麒は祐巳をよりいっそう強く抱きしめた。
「俺、祐巳のこと、もう「姉ちゃん」って呼ばないよ。」
「うん。いいよ。」
「祐巳、俺も誰より祐巳が好きだ。」
「ありがとう。」
逃げようと言った祐巳の肩は、本当は震えていた。
だから何があったって俺は、世界で一番大好きな彼女を守ろうと自分に誓った。