MARIA

□この世界が
1ページ/1ページ


「祐麒、もし私が居なくなっちゃったら、どうする?」



学校の帰り道で、偶然合った祐麒と祐巳。

夕暮れのバス停で2人きり。

急に祐巳が口にした言葉は祐麒を驚かせた。





「・・・祐巳はどこかへ行きたいの?」





「そういうことじゃなくって、・・もしもね、なにか起きたりして、私が祐麒のそばにいれなくなっちゃったら、そうしたら祐麒はどうする?」


今にも泣き出しそうな顔をして祐巳は祐麒に訪ねた。







「・・・・そうしたら、一緒に逃げよう。それでずっと一緒に・・「無理だよ。」

祐巳は祐麒が言い終わる前に言った。




「聖さまもそうだったもん。逃げようって栞さんと約束したけど、結局2人は別れることになったんだよ?





祐麒はそっと祐巳を抱きしめた。


切なくなるくらい愛おしい実の姉が、自分の前から姿を消そうとしていたら・・・・。





自分には何が出来るんだろう。







「俺、背も飛び抜けて高いわけじゃないし、頭だってすごく良い訳じゃない。頼りになる男かっていわれると少し自身ない。
でも、祐巳と一緒なら俺、どんなことだって頑張れるんだ。
祐巳がそばにいてくれれば、笑顔でいれるんだ。
だから答えなんか出せないよ。
どんなことしてでも祐巳のこと離さない。離れたくない。それだけなんだ。」






そういって祐巳を抱き寄せる力をいっそう強めた。







「・・・・・祐麒。」






「・・ん?」






「・・・ぁたしもだよぉっ。・・うぅっ。・・・わたし・・も・・ゆうき・・・と・・ずっとっ・・」








「うんっ。・・・うん・・わかって・・るよ。」





一生懸命想いを伝えてくれようとする祐巳が愛しくて、祐麒の目からもいつの間にか涙がこぼれていた。





この世界が2人を認めなかったとしても、確かにある気持ちが2人を繋ぐ。




多くを求める訳じゃない。





ただ自分の隣に君がいれば。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ