MARIA
□この世界が
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「祐麒、もし私が居なくなっちゃったら、どうする?」
学校の帰り道で、偶然合った祐麒と祐巳。
夕暮れのバス停で2人きり。
急に祐巳が口にした言葉は祐麒を驚かせた。
「・・・祐巳はどこかへ行きたいの?」
「そういうことじゃなくって、・・もしもね、なにか起きたりして、私が祐麒のそばにいれなくなっちゃったら、そうしたら祐麒はどうする?」
今にも泣き出しそうな顔をして祐巳は祐麒に訪ねた。
「・・・・そうしたら、一緒に逃げよう。それでずっと一緒に・・「無理だよ。」
祐巳は祐麒が言い終わる前に言った。
「聖さまもそうだったもん。逃げようって栞さんと約束したけど、結局2人は別れることになったんだよ?
」
祐麒はそっと祐巳を抱きしめた。
切なくなるくらい愛おしい実の姉が、自分の前から姿を消そうとしていたら・・・・。
自分には何が出来るんだろう。
「俺、背も飛び抜けて高いわけじゃないし、頭だってすごく良い訳じゃない。頼りになる男かっていわれると少し自身ない。
でも、祐巳と一緒なら俺、どんなことだって頑張れるんだ。
祐巳がそばにいてくれれば、笑顔でいれるんだ。
だから答えなんか出せないよ。
どんなことしてでも祐巳のこと離さない。離れたくない。それだけなんだ。」
そういって祐巳を抱き寄せる力をいっそう強めた。
「・・・・・祐麒。」
「・・ん?」
「・・・ぁたしもだよぉっ。・・うぅっ。・・・わたし・・も・・ゆうき・・・と・・ずっとっ・・」
「うんっ。・・・うん・・わかって・・るよ。」
一生懸命想いを伝えてくれようとする祐巳が愛しくて、祐麒の目からもいつの間にか涙がこぼれていた。
この世界が2人を認めなかったとしても、確かにある気持ちが2人を繋ぐ。
多くを求める訳じゃない。
ただ自分の隣に君がいれば。