落乱
□春風がすぐそこに
1ページ/1ページ
「あったかーいねぇー!へーすけくんっ。」
火薬庫の整理も終わり、タカ丸と兵助は庭を歩いていた。
「あぁ、少し熱いくらいだ。」
春の陽気と花の香り
そして風なびく長くて黒い髪
「ねぇ、へーすけくん。ここで休憩して行かない?」
そこは大きな桜の木の下
「・・・、少しだけなら。」
「やった!」
はしゃぎながら木に腰掛けるタカ丸
「おいでー、へーすけくん。」
そう言ってタカ丸はあぐらをかいた自分の膝を
叩いた。
そこに座れということだろう。
返事を返す前に兵助は腕を引っ張られ
強制的にタカ丸の膝に座らせられた。
「ん〜♪兵助くんの髪、お花のにおーい。」
「ちょっと、タカ丸さんっ、くすぐったい。」
タカ丸は兵助の髪に顔を埋め、次第に顔が首筋に辿りつく。
肌に馴染むタカ丸さんの唇に、心地よささえ感じてしまう。
これはきっとこの春の気候のせいだ。
「すきだよぉー、へーすけくん。」
耳元でささやく
「もう何回も聞いた。」
「何回言っても足りることなんてないよー。」
「俺も・・・何回聞いてもいいかなって、最近思うようになった・・かな。」
小さな声で呟いた兵助の言葉をタカ丸は聞き逃さなかった。
「ねぇ、コッチ向こう?今へーすけくんの顔すごく見たい。」
タカ丸は優しく兵助の顔を自分の方へ向けさせる。
両手で隠した兵助の顔は、確かに赤かった。
「そう言う時のタカ丸さん、ずるい。」
「うん、俺ねーずるいし欲張りなんだぁ。」
言葉は柔らかいが、やはり年上だ。
本当は余裕なところも、大人なところも。
「あ、」
風でのってきた一輪の花が兵助の髪におちる
「綺麗な花だね。へーすけくんの黒い髪に良く似合う。」
タカ丸は兵助の髪を掻き上げ、花をつけ直した。
「春の・・」
「ん?」
「春のおくりもの。」
淡い桃色の花、
2人の心に咲く
枯れることを知らない花