MARIA
□やっぱり今日は
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天気予報の通り、空は晴れ渡っていた。
「祐麒!歩くの早いよー。」
「あぁ、ごめん。」
2人は街へと買い物に来ていた。
休日で天気も良いため、街は人でにぎわっていた。
「そろそろ休憩にする?喫茶店近いし。祐麒疲れたでしょ。」
「別にこれくらい大したこと無い。」
正直言えば大したことあった。両手には祐巳の買い物袋。しかもこの混雑の中、あそこの店、そこの店と祐巳に連れまわされていたからだ。
でも男としてこのくらいは平気な顔でいたい。
「はいはい。じゃ喫茶店行こう。」
そして結局祐巳には、「男としての意地」を軽く流される。
「あれっ?」
急に立ち止まる祐巳。
「何?忘れ物でもしたの?」
「志摩子さんに乃梨子ちゃん?」
「えっ?」
「祐巳さん?」
祐巳の視線の先には確かに白薔薇姉妹がいた。
「ごきげんよう。偶然ですね、祐巳さまに祐麒さん。お二人でデートですか?」
乃梨子が訪ねる。
「デート?やだなぁ乃梨子ちゃん。」
そう笑ってる祐巳を見て、分かっていた事ながら祐麒は少し寂しくなっていた。
「(せめてちょっと照れてくれたりとかしてくれたら・・泣)」
「お二人は何しているの?」
「私は乃梨子と買い物に。」
「なんだ私たちも一緒。これから喫茶店に行こうと思うんだけど、良かったら志摩子さん達も一緒にどう?」
「ありがとう、でも残念だけれど私たち寄るところがあるから。」
「そっかぁ。じゃあまた今度。ごきげんよう、志摩子さん、乃梨子ちゃん。」
「ごきげんよう。」
「ごきげんよう、祐巳さま、祐麒さん。」
そういって白薔薇姉妹と別れた。
「ねぇ、志摩子さん。」
「何?乃梨子。」
「・・・・。」
「幸せそうだったわ、祐巳さんも祐麒さんも。」
「・・・・・・志摩子さんは?」
「・・・もちろん、私もとても幸せよ。」
「・・・・・・。」
本当は寄るところなんてなかったけれど、志摩子さんは祐巳さまに気を遣った。
私にはわかる。
志摩子さんの妹だもの。
志摩子さんはとても祐巳さまのこと好きだということを。
「乃梨子・・・?」
でも私だって志摩子さんのこと大好きだもの。それに志摩子さんも私のこと好きって言ってくれた。
そこに嘘はない。
祐巳と祐麒は志摩子さん達と別れてから喫茶店へ入り、十分休憩したのでそろそろ帰るかと店を出た。
「あーあ。せっかく会ったのにー。」
「じゃあ、志摩子さんたちのとこ行けば良かったじゃん。」
「なに怒ってんのよー、祐麒。」
「怒ってねーし。どーせ俺荷物持ちですから。」
「まったくお子さまなんだから。」
「祐巳に言われたくな・・っ冷て!」
「あ、雨?」
「嘘だろ?どーなってんだよ天気予
報!ったく、祐巳こっちこい!」
祐麒は祐巳の肩を抱いて自分の方へ引き寄せ、祐巳が濡れないように紙袋を祐巳の頭の上にかぶせながら走った。
やがて近くの公園の屋根のあるところへ来た。
「祐麒大丈夫っっ!」
「えっ、なにが?」
「すっごいびしょびしょじゃない!なんで自分のこと考えないのよっ!」
「だって祐巳はあんま濡れなかったし」
「もーっ!ばかっ」
そう言って祐巳はハンカチで祐麒を拭く。
「土砂降りだなー。」
祐麒が言った。
「うん。」
「でも俺楽しいよ。」
「なんで?」
「・・・だって、しばらくここに居れるじゃん。」
「祐麒ここ好きなの?」
「・・・・・・まぁね。」
祐巳の隣が好き。
「ふーん、・・・・・・私も嫌いじゃないよ。」
小さく祐巳が言った。
「え?」
「ねぇ祐麒、今日のデート楽しかったよ!」
「・・・・え・・・・祐巳?」
ふふっと彼女が笑う。
やっぱり今日は晴天だった。