短編

□酒は飲んでも呑まれるな
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具合のよろしくない昶を部屋まで運ぶと、力尽きたように勢いよくベッドへダイブした。
そこまでは良かった。

「あの、…あきらく…ん?」

「ンだようるせーなー…」


でも。
「どうしてYシャツ一枚になるんですか……」
「楽だから」
がくんと崩れ落ちるように白銀が床に手をつく。
昶はベッドに上がるや否や、制服を脱ぎチョーカーを外し完全にリラックスモードである。
酒のせいで体温が上昇しているのか頬はほてり一段と色気が増しているのを目に留めて、白銀は酷くうなだれた。
ベッドに体を寝かせたまま頭だけを下に仰け反らせ、白銀に「お前大丈夫か」と気遣う。
(なんですかその悩殺ポーズは…)
重力に従い前髪がはらりと落ちる。
普段見せないおでこが可愛い、と思った瞬間、体がずるずると頭から落ちていった。
「うわ、」
床に頭をくっつけ、下半身はかろうじてベッドの上。
滑った際にYシャツがめくれ、腹まで露出する。
それに第三ボタンまで開けていたため、色々と乱れまくりだ。
衣服から覗く二つの突起にいやでも目がいく。

白銀はヒク、と口元を引きつらせると、部屋から出て行こうと立ち上がった。
色々と危ない格好をしているが、多分彼は酒に酔っていて無意識なのだろう。
(ワタシにだって良心と理性くらいあるのですよ)
ここで彼を襲わない自分は、きっと紳士グランプリを受賞するであろう。そんなもの無いけど。

ドアに向かって歩き出すと、後ろから足を絡め取られた。
「え?」
「……外は寒いだろ。一緒に寝ても良いんだぞ?」
「ちょ、昶君?」
「何処に、行くんだ?」
きわどい格好をしてつぶらな瞳で上目遣いを仕掛ける昶は、柄にも無く寂しがりやの猫のようだ。

「お前はずっと一緒にいるとか言うくせに、いつもふらっといなくなる…。」
喋っているうちに気持ちが萎んできたのか語尾が小さくなっていく。
その様子に、白銀は驚きを隠せなかった
(いつもあんなにツンツンしているのに、キミはそんなことを考えていたんですか?)

いたく感動したのでしゃがんで頭をポンと撫でると、嫌がる素振りも見せずにじっと白銀を見つめる。
「これ…確実に誘ってますよね」


どこにも行きませんから、安心してくださいね。



肩に手を置いてちゅ、と優しくキスをする。
昶はふんわりと微笑んで白銀に身を任せた。
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