短編

□酒は飲んでも呑まれるな
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重苦しい沈黙と空気が部屋を支配している。
白銀はいつも貼り付けている笑顔を消して殺気だっており、洸と賢吾はそれにひしひしと恐怖していた。

「……誰ですか…」


倒れている昶を抱き寄せ、肩が小刻みに震えているのが伺える。

「昶君にお酒を飲ませた奴は…誰ですか」








酒は飲んでも呑まれるな









「ま、まぁ落ち着けって」
「ごめん!まさか昶がこんなに酒に弱かったなんて知らなくて…」
白銀はそっと昶をソファに横たえると、しどろもどろになだめすかせようとしている洸と賢吾に近付いていった。
鋭い視線は、なまじ顔が整っているだけに迫力もひとしおである。
怖い。
コツ、コツ、とまるで恐怖を煽るようにゆっくりと足音を響かせる。
体が金縛りにあったかのようにピクリとも動かなかった。
白い手袋をはめた手が、ゆっくりと洸の首に伸ばされ、あとちょっとで届きそうになった、その時。

「……ん、」
昶が目を覚ました。
その鼻にかかった声にぴたりと動きが止まり、踵を返してソファへ駆け寄る。
「大丈夫ですか、昶君!?」
洸と賢吾はへなへなと床に尻をついた。
「…助かった……」


「さ、帰りましょう」
「………ああ」
返事をするのも億劫そうな昶を寝惚けているのかと思い、肩を貸す。
白銀はふり返ってふたりにニッコリと毒のような笑みを浮かべた。
「また来ます。」
怖い。
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