短編

□残暑厳しき夏の昼
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きっかけは忘れた。
都会は40度に達したという異常な暑さのなかで、もっと熱くなるようなことをしている俺たちは、よほど熱に浮かされているらしい。



「ぁ、うあ、ン、」
後ろから激しく突かれ快感の波が襲う。
あえぎ声を気にする余裕など2人には残っていなかった。
壊れてしまいそうな快感から逃げようとベッドを這うと、白銀の腕が逃がすまいと引き戻す。
それでも一向に動くのをやめない腰に、昶の目に涙が浮かんだ。
「はぁ、はぁ、ん、ぁ」
体を更に引き寄せられ抱きこむと、汗ばんだ昶の首筋を吸い上げる。
「い、」
微かな痛みに声を上げると、昶の首筋に赤い跡がつけられていた。
白銀は腰を動かしながらも、同様に背中や腕にいくつもの小さな跡をつけていく。

まるで、これは自分のだと主張しているかのように。
その様子を見て、昶も負けじと白銀にキスマークをつけようと体を白銀に向けた。

「ぅあっ!?…んぅ、」
「…!あ、昶くん…ッ」
体制を前に変えると、繋がった部分がひと際強く擦れて、ぐちゅ、と水音を立てた。
思わずイキそうになるのを必死に堪えて、昶は白銀の肩に腕を回す。

「ん、…昶く、ん?」
「…あんま、見るんじゃねぇ」
お互いの表情が見れると、随分と気恥ずかしいものがある。
白銀は昶の可愛い表情がみれて嬉しいようだが。
昶は少し躊躇したような素振りを見せたが、そろそろと白銀の汗ばんだ白い胸に口を這わした。

「ん、」
チクリとした痛みを覚え、胸を見下ろすと赤い跡がくっきりついている。
「ふ、なんか、すごく嬉しいです、」
嬉しそうに微笑んで昶の頭を撫でる白銀は、昶の目から見ても十分に美しい。

(コイツは、俺のだ)

まるで花のようなキスマークを見つめ、昶は満足そうに笑った。








「あー…ダルい。」
「……大丈夫ですか?」
ぐったりと転がる昶に、白銀はぱたぱたとうちわを扇いでやった。
体は綺麗に拭いて、服ももう着ている。
「昶くん」
「あ?」
目をつむったままの昶の頬を撫でると、なんだよと払い除けられた。
そこに性的なものは全く感じられなかったが、あの表情を見れるのは、自分だけなのだ。
微笑んで、白銀はまたうちわを扇ぐ。


「やはり、ワタシと昶くんは結ばれる運命にあったんですね」
「黙れ」







蝉の鳴き声が、聞こえる


互いの体に咲いた花は、夏が終わる頃まで、扇情的に咲き誇っていることだろう。














2008・8・20
UP日 2008.9.27


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