☆小説☆
□■不文律 前編■
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「例えばこのまま君と過ごしても…僕の本質は変わらない。君もそうでしょ」
「…変わる、かもしれねぇ…」
「獄寺?」
「オマエと逢う度に、もっとオマエと一緒にいたくなる。オマエに近づく度に、もっとオマエに触れたくなる。こんなんじゃ、オレはきっと…きっと…っ」
「…獄寺」
扉に縋るようにして初めて吐き出される心裡。
身の内から沸き上がる歓喜を抑えながら、目の前の首筋に鼻を擦り付けるようにして唇を寄せる。
「ひ、ば…」
「大丈夫。君がそんなに弱くないことは僕が知ってる」
抱いた腕に力を籠める。数秒の間を置いて獄寺の手がそれを掴んだのを感じる。
「それに君が君でなくなったら、僕が咬み殺してあげるから」
耳元で囁けば、忍び笑いに細い肩が震えた。
「…それだけは遠慮するぜ」
「なら、帰るのは止めなよ」
こくんと頷かれたのを機に、この日二度目の深いキスを交わした。
END
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