☆小説☆
□■蛹2■
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「−−−−…っっ!!」
天に手を伸ばした恰好で目が覚めた。
「ゆ、め…か…」
上体を起こし、ここが自室であることを確認してから漸く息を吐く。額に手を当てて息を整える。水を浴びたかのように全身を包む寝汗が気持ち悪い。そしてひどく喉が痛んでいた。
「…くそっ、ヤなこと思い出させやがる」
そうだ。あれは過去の記憶。路地裏に座りこんでいた少女は獄寺自身で、あの男はあの後。
「ぅ…」
身体を見知らぬ人間にべたべたと直接触れられた感覚に襲われ、粟肌立った悍ましさに思わず震えた。
ベッドの上で夢の自分と同じように膝を抱えて小さくなる。
あれが最初だった。やさしい仮面を被った大人が、本能的な恐怖を呼び起こす触れ方をしたのは。
脳裏に響く危険を知らせる警鐘に従い、男が食事を取りにいった隙に窓から飛び降りて逃げ出した。
それから幾度か同じような目に遭いかけて、人身売買や小さな子供を対象とした趣味趣向が存在することを朧げながらも理解した時、獄寺は危険を少しでも減らす手段として選択した。少女であることを隠すという選択を。