☆倉庫☆

□■屋上■
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屋上の扉を開けると、肌に刺すような感覚が襲った。

(殺気…?)

発信源を探して見渡せば、フェンスに頬杖をついてグラウンドを見下ろす人物の背中が視界に入った。

その姿には見覚えがある。いまだ強さの程を計りかねている沢田綱吉を、10代目と呼んでいつも群れている草食動物の一人だ。確か名前は…

(獄寺隼人…だっけ)

イタリアからの帰国子女で、どういう手段を用いたのか、風紀委員会の預かりしらぬところで編入手続きを済ませていた人物という記憶がある。

沢田絡みで何度か叩きのめしたこともあった気がする。

得物としてダイナマイトを使うが、攻撃方法はいたって単純としかいいようがなく、いつも真っ直ぐでわかりやすいものだった。

そのくせ定期テストの順位は飛び抜けていたので、教師達が扱いに困っているというのを小耳に挟んだことがある。

そこそこの頭脳は持っているのに、群れることが弱さになるのが何故分からないのだろうか。


とにもかくにも、雲雀にしては珍しく特定の人物のプロフィールを思い浮かべたのは、今まで持っていた印象と、視界の中の彼とが一致しなかったからだ。

弱い草食動物が発するとは思えないほどの鋭い殺気を感じる。

こちらに背を向けて武器も取り出していないのに、屋上は完全に彼の領域になっていた。

一歩踏み込んだ時から、ここに意識を張り巡らせて支配している人物から、雲雀は警戒対象として認識されている。

(へぇ…こんな芸当もできるんだ)

普通の中学生なら、こんな本物の殺気が出せるはずがない。

例え不良という素行の悪さがあっても、これはそんなカワイイ部類の敵意ではない。

(……っ!)

不意にゾクゾクとしたものが背中を駆け上がる。それは心地よい高揚感だ。

あながちマフィアがどうの、というあの赤ん坊の話は本当なのかもしれない。



「ねぇ、何してるの?」


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