☆倉庫☆

□■邂逅(59Ver)■
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名を呼ぶ声も、体を支える腕も、そこから伝わる体温も、全て夢だと思った。


「な…んで…?」
「さぁ?なんでだと思う?」

問いを問いで返しながら、力の入らない獄寺の腕を取り、引き上げて立たせるのは間違いなく

「…ヒバリ?」
「うん」

あぁ、本当に雲雀だ。その声も、見下ろしてくる切れ長の目も。
思わず涙腺が緩みそうになるのを、キツク目を閉じることでこらえる。

「随分と無様なことになってるじゃない」
「うるせ…っ痛っ!」

反論は手加減なく傷口を掴まれた痛みにより遮られた。先程銃弾の貫通した左肩と、次いで左足も痛み出す。

(大丈夫だ。痛いと感じられるなら、俺はまだ、生きられる…っ)

「まだ行けるんでしょ」
「トーゼン、だ」

雲雀の腕を振り払い、ふらつきながも体勢を整える。少し前に獄寺を攻撃して来た輩共は、思わぬ乱入者の登場に、なりをひそめているようだった。

「哲」
「へい」
「ここは任せたよ。群れるしか能のないあいつらを一人残らず咬み殺せ」
「はっ。恭さんの仰せの通りに」

雲雀は自分の組織の連中と共にここにきたようだった。簡潔な指示を受けた黒い集団があっという間に散っていくのを、相変わらず凄いものだと見送る。

とあるマフィアの殲滅。近隣マフィアの動向を調査していた際、浮かび上がった怪しい裏取引。表沙汰になるまでにはびこらせるとやっかいだが、規模小さかった為、ボスにさえ知らせず水面下で摘み取るつもりで久々のオフである今日を選んだのだが…

「つーか、マジになんでオマエ、ここが…」
「今度から人に知られたくない機密文書は燃やしておくことをお勧めするよ」
「…勝手に人の机漁りやがったな」
「オフの日に留守にしてる君が悪い」
「鍵は?」
「あんなもの意味があるの?」

心底不思議そうに問い返してくる様子に、獄寺は自室で破壊された引き出しを脳裏に思い描き、小さく舌打ちをした。

「そんなことより、面白い匣を見つけたんだ」
「ホントか?!」
「ほら、行くよ。馬鹿なボス猿の居場所くらいは掴んでるんでしょ」
「お、おぅ」

珍しく手を貸してくれるらしい雲雀の背中を追いかけようとして、唐突に頭の中で閃きが瞬いた。

「…あ」
「どうしたの?」
「わかったぜ。さっきの答え」
「?」
「オマエがここに現れた理由」


『      』


顔を指差して宣言してやると、

「…君にしては上出来だ」

と満足気に雲雀が口元に妖艶な弧を描いた。


END

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