☆倉庫☆

□■Voice■
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(まさか声が枯れるほど泣くなんてね…)

柩の前で肩を震わす彼は、もうどれくらいの時間、ここにいたのだろうか。
もう動くことのない主を呼ぶ声は、弱々しく掠れていた。

匣の調査のため国外に出ていた雲雀の元にもたらされた突然の訃報。
内容が内容だけに一応確認のために並盛へと戻り、ボンゴレの隠しアジトの中でも人払いをされたこの部屋に着いた時、獄寺は既に声を半分失っていた。



−−−ねぇ、例えば僕が死んでも、君は声を枯らすまで泣いてくれるのかな?


悲しみの淵にいる君に、僕じゃない他人を想って泣く君に、くだらない問いを投げ掛けてみる。

反応なんて期待してなかったから、肩の揺れが止まり、涙を拭う動作をして君が振り返った時は、正直驚いた。

入口近くの壁に寄り掛かる僕に、泣き腫らしたことがありありと分かる姿の君がゆっくりと近づいて来る。

黒のスーツに黒のネクタイ。
常と同じ恰好だが、状況からすると喪服に見えてくるから不思議だ。
まあ、自分も同じような服装だけれども。

「…(ひ、ばり)…」
「何?」

殆ど音にならない言葉。しかし目の前ならばある程度読み取ることができた。
そして彼の感情も、離れていた時よりも汲み取りやすくなる。

俯いた顔を上げた獄寺の目には、哀しみだけに濡れてはいなかった。

(怒り…?)

「(雲雀、くだらないことを言うな)」
「うん、そうだね」

そう思うよ。
横たわる彼と自分とを君に比させるなんて、愚の骨頂だ。
そんなのもう何年も前から分かっていたこと。
自嘲にも似た笑みを浮かべ、雲雀は獄寺の肩越しに柩に視線をやる。


もしかして、僕はらしくもなく沢田の死という現状に、動揺してるのかな?


「(ひばり…っ!!)」
「?!」

突然、胸倉を掴まれ、予期できなかった自分に内心驚いた。
そして次に告げられた言葉にも。

「俺を置いて死ぬなんてこと、絶対ェ許さねぇからな…っ!お前だけは…最期まで生きる奴だって思っ…」

掠れていたはず声が、この時だけははっきり聞こえた。

しかし言葉は最後まで続かず、せき止められなかった水分ががみるみるうちに溢れ出す。


「…っ、悪ィ…っ」

戸惑い背を向けた痩身を後ろから抱き込んだ。

「…っ」
「獄寺隼人…僕は君の信頼を裏切ることはしないと約束してあげる」

耳元に囁くとぴくりと腕の中で身体が震える。

「本当か…?」
「僕を誰だと思ってるの?……落ち着いたら部屋においで。喉に効くものを用意しておくよ」

君にとって沢田がどれほどの存在だったか、全てを知りはしないし、知りたくもないけれど、君が僅かにでも僕を想ってくれているのなら、僕のいないところで泣かせるようなことはしないと誓おう。

首筋に少しかかる髪をずらし、うなじに唇を寄せてもう一度誓いの言葉を囁いた。



「約束するよ。君をひとりにはしない」



END

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