☆倉庫☆

□■視線■
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気付いたのはほんの偶然。


居残り補習からようやく解放されて、夕暮れの廊下を急ぐ。

(もう待ってるよね…)

この日、ツナは校門で獄寺と待ち合わせをしていた。
補習で遅くなるから先に帰ってていいと伝えたが、「いいえ!10代目をお送りするのも右腕の務めですから」と息巻く彼を止めるのは無理なこと。

「図書室で調べ物をしてるので、補習が終わる頃に門で待ってます」と言っていたが、多分30分前から約束の場所で待っていそうな獄寺だから、ツナは昇降口で靴にはきかえると、すぐに外に飛び出した。

門に向かって駆けながらふと、視界の端で見慣れた銀色が揺れた気がして思わず立ち止まる。

(あれ?獄寺くん…?)

中庭に一人佇むのは、紛れも無く彼だ。


黙っていればホントに同い年なのかと思うほど、大人びた顔をしている。今更だが、女子達が騒ぐのも無理はないと納得してしまう。

(何、してるんだろう?)

いつもらなこちらの気配を尋常でない察知力で感じ取り、すぐに駆け付けてくるのに。

今、ツナの視界の中の彼は、静かに校舎を見上げている。

その視線の先を辿っていくと、意外な人物がいた。

(雲雀さん…?)

視線の先−−校舎3階の窓際に立っていたのは、漆黒の髪を持つ並盛最強の風紀委員長、雲雀だった。

思いかけない取り合わせに、再度友人を見る。
と、掬うようにした手元に獄寺が顔を近付けると、その直後、小さな物体が飛び立った。

羽ばきながら上へと移動した影が、ポスンと雲雀の頭に乗ったのをみて、その正体がヒバードだったとようやく気付いた。

それと同時に先程の獄寺のした行動が、ヒバードへのキスだったということにも。


(あれ?どういうこと…?)


いつもなら、片やダイナマイト、片やトンファーを構えて、一触即発な空気に自分は胃を痛くしているのに。


あんな空気をまとう彼を知らない。
あんな優しげな表情の先輩を知らない。


窓から見下ろす雲雀は、何かを告げたようだ。
ここからでは距離があるため、声は聞こえないが、獄寺の気に障る内容だったのだろう。
言い返している様子に楽しげに表情を緩めている。
怒っているはずの獄寺も、喧嘩腰ではなくどこか照れたように見えるのは気のせいだろうか。


(なんだろうこの感じ…)

見てはいけないものを見てしまったような、声を掛けるのを躊躇わせる雰囲気がそこに満ちていた。

どれくらい見ていただろうか。時間にしてはほんの十数秒も経っていなかったかもしれない。

しかし不意に上方の視線が動き、細められた目と合ってしまった。

「っっ!」

瞬間、ゾクリと背筋が凍った。
視線が外せない。足も動かせない。
ツナが戸惑っているうちに、視線の主はゆっくりと動かした人差し指を三日月を象る口元で立てた。


『分かってると思うけど、秘密だからね?』


低く艶のある声が耳元で聞こえた気がして、慌てて頭を振る。もう一度見上げた時には、もう窓際に人影はなかった。


後日、また同じような光景に出くわして、二人の関係にツナが気付くまでにはそう長い時間はかからなかった。


End

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