☆小説☆

□■始まりは0214 Side H■
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二月十四日、日曜。世の中には知らなくてもいいことがあるということを、この日、雲雀は初めて知った。



世は休日。といっても、並盛の風紀を守る雲雀には今日も見回りと言う仕事がある。
勿論、世間がバレンタインデーということは知っていたが、要は風紀が乱れなければいい、雲雀にとって大事なのはそれだけだった。

浮ついた空気が蔓延する商店街をメイン通りは風紀委員たちに任せ、自分は裏通りを中心に歩く。大概、不良たちは少し脇に入ったところで恐喝等をしていることが多いからだ。
雲雀の予想は当たり、朝からすでに数人の草食動物を張り倒していた。

本日3組目の集団を一掃した後、次の獲物を探しに足を踏み出せば、てててという足音とともに牛柄の服を着たもじゃもじゃ頭の子供が角を曲がって雲雀の右足にぶつかってきた。

「ぐぴゃっ!」
(沢田とよくいる子供・・?)
「・・・・・・」

見下ろす視線と見上げる視線が交差した瞬間、子供はくるっと反転して、どういう原理か頭の中からバズーカのようなものを取り出してもと来た道を戻っていく。
その直後、聞こえてきたのは




「バカ寺!ランボさん、許さないんだもんね。これでもくらえーーっ」
「うわ、なにしやが・・・!??」
「ランボ!!獄寺くん??!」
ボフンという形容しがたい音と、慌てたような沢田の声。そして、その数秒後に

「じゅ、十代目!」

聞き覚えのある呼称を、聞き覚えのない低い声が紡いでいた。

角を曲がり、大通りに出る。
すると、黒いスーツをまとった銀髪長身の男が、沢田にひざまづいているという奇妙な光景があった。

「まさかお会いできるとは。やはり十年前からカッコイイっすね」
「いや、そのっ・・・俺、っていうか、立ってくれませんか?」

沢田の反応は不思議なものだった。
見知らぬ人物に対するものでもなく、かといって親しい人物と言うわけでもなさそうだ。かなり戸惑っている。

別にそれだけなら雲雀も気に留めることはなかったのだが、男が立ち上がった際、懐に黒光りするものを捕らえた瞬間、身体が反応した。


「ねぇ、その男、何者なの?」


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