☆小説☆

□■不文律 後編■
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「帰るのは止めなよ」

その言葉に頷いたのは、もうどうしようもなくなっていたからだ。

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この状況をどうすればいい?

近すぎる気配、繋いだ指先、匂い、体温、感触、全部が『雲雀恭弥』という存在を伝えてくる。

「…っ、…」

息も奪い合うようなキスを交わして、薄暗がりの応接室で二人、抱きしめ合う。

「…ヒバリ…」
「…なに?」

額をくっつけ雲雀の漆黒の瞳を見つめる。

箍が外れるとはこういうことを言うのだろう。

越えてはならないと、口には出さないがずっと自らに課していたルール。

必要以上に馴れ合わない。日時を指定する約束はしない。

それは互いに解り切っていると思っていたから、10代目にご用事があるときなど、不定期に訪れる逢瀬の時間も、学校が完全に閉まる前に終らせていた。
例え、離れた後の冷えていく身体にらしくない切なさを感じていたとしても、不文律を破るわけにはいかなかった。



俺が一番に守りたいもの。
アイツが一番に守りたいもの。



それを見誤るわけにはいかなかったし、いまでもそう思っている。

でも、その一方で。
雲雀を好きになった心が望んでいたのは、とても単純なこと。


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