☆小説☆

□■蛹2■
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「可哀相に。何か食べ物をあげよう。一緒においで」

優しそうな笑顔を浮かべた中年の男が、路地裏の片隅で膝を抱えた少女にが手を差し延べる。

「お嬢ちゃんみたいな可愛い子が、一人でこんなところにいたら危ないよ。ほらおじさんと一緒に行こう?」

差し出された掌を見つめたままの少女に、男は根気よく声を掛け続ける。
そして、

「もしかして家に帰りたくないのかい?それなら約束するよ。おじさんはおうちの人に告げ口したりしないから」

家を捨ててきた少女の心を読んだかのように告げられた言葉に、ようやく彼女は反応した。

「ほんとうにうちにはいわない?」
「ああ、言わないよ。さぁ、行こうか」
「……うん」

小さな手で男の手を掴み、導かれるまま歩き始める少女に、獄寺は必死に叫んだ。この先に彼女を待ち受けているコトを知っているから。

『行ったらダメだ。見掛けに騙されるな。ソイツの目的は−−…!!』
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