☆小説☆
□■君と二人で■
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予想もしない侵入者は、総じて夜にやってくるものだ。
「こんばんわ、獄寺隼人くん」
「…何しにきた、六道骸」
「誕生日だと聞いたものですから」
警戒心もあらわに問いかけた獄寺に対してにっこりと微笑んで、窓から部屋に入り込んできた輩がちゃっかり靴まで脱いでるものだから、余りにも自然過ぎて思わず侵入を許してしまった。
「よかったです。今日に間に合って」
「…っ」
窓際に置かれたベッドの上。向かい合って目が合うと、ほっとした様子で骸が呟いた。それが心の底から言っているように見えて、少しどきりとする。
「さっそくですが、言ってもよろしいですか?」
「お、おぅ。仕方ねぇから聞いてやる」
なんで骸相手にこっちが変な緊張をしなければならないのか。釈然としないのを強気な言葉で隠す。
「生まれてきてくれて、ありがとうございます」
「?…なんで『ありがとう』なんだ?」
てっきり「おめでとう」と来るかと思ったのに。
それがよっぽど顔に出てたのだろう。骸は小さく笑って、それはですねと言葉を続けた。
「貴方が生まれて来たことで僕は貴方に逢うことができ、そして貴方のおかげで初めて、この生も悪くないものだと思うことができたからですよ」
「…大袈裟すぎるだろ」
「いいえ、本当のことです」
ふるりとかぶりを振った骸は、ベッドを降りるとすっと膝まづき恭しく獄寺の手を取りそっとキスをする。