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【prologue】
短い春休みがあっさりと終わりを告げ、明日からいよいよ僕は高校三年生だ。
…いや、もう零時を過ぎているから今日か。
クラス発表は終業式の日にされているから、親友の慎也が同じクラスであることもわかっている。だから特に明日からの学校生活に不安はない。
僕はまだ子供だった
僕はもう大人だった
未来なんて漠然としていて、過去を直視することもできなくて。
平均的に考えてもすでに人生の四分の一を消費しているはずなのに、僕は何も手に入れていないし、失ってもいない。
気付かないうちに手に入れていて、失っているのかもしれないけど。
僕は気付いていなかった
考えなきゃいけないこととか、考えなくてもいいこととか。
だって考えたって解決できることなんてないんだ
ただ、冷たい不安を抱えるばかり
適当でいいんだ。
いいと思ってたんだ。
時計を見ると一時になろうとしていた。寝坊はマズい、と慌てて布団をかぶった。
彼を見下ろす夜空には、
不安を詰め込んだような暗雲が立ち込めていた。